ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』の感想@2019年シアタークリエ

日比谷のシアター・クリエで上演されているミュージカル『ビッグ・フィッシュ』を観てきました。

2017年に日生劇場で初演されていた作品で、2019年は再演。私は今回が初めての観劇で、今回は2回観劇しました。

再演は12chairs versionとなり、12人+子役のヤングウィルのみ。初演は22人いたので、人数も劇場も凝縮されたとのこと。

こう聞くと興行的に厳しいのかな?と勝手に心配してしまいますが💦

演出の白井さんがどうしても続けたいと考えていた作品で、実現できたのが12chairs versionなのだそう。

人手が足りなくなるし、主役の川平慈英さん以外、一人何役も演じられていて、皆さんきっと大変だったと思います。

でも手抜きが一切なく、舞台の作り方がとても丁寧

舞台作りなんて私はもちろん素人ですが、なんとなく手抜き仕事ってわかる。でもそれを全く感じさせず、

役者さんはもちろんだけれど、作り手さんたちも、この作品をとても大切に思っているんだなと全身で感じられる舞台でした。

『ビッグ・フィッシュ』のあらすじ

ストーリー

ここは東宝からの引用です↓

エドワード・ブルーム(川平慈英)は昔から、自らの体験談を現実にはあり得ないほど大げさに語り、聴く人を魅了するのが得意。

自分がいつどうやって死ぬのかを、幼馴染のドン・プライス(藤井隆)やザッキー・プライス(東山光明)と一緒に魔女(JKim)から聴いた話や、共に故郷を旅立った巨人・カール(深水元基)との友情、霧の中で出会った人魚(小林由佳)の話、団長のエーモス(ROLLY)に雇われたサーカスで最愛の女性、妻・サンドラ(霧矢大夢)と出逢った話を、息子のウィル(浦井健治)に語って聞かせていた。

幼い頃のウィルは父の奇想天外な話が好きだったが、大人になるにつれそれが作り話にしか思えなくなり、いつしか父親の話を素直に聴けなくなっていた。そしてある出来事をきっかけに親子の溝は決定的なものとなっていた。

しかしある日、母サンドラから父が病で倒れたと知らせが入り、ウィルは身重の妻・ジョセフィーン(夢咲ねね)と両親の家に帰る。

病床でも相変わらずかつての冒険談を語るエドワード。本当の父の姿を知りたいと葛藤するウィルは、以前父の語りに出ていた地名の登記簿を見つけ、ジェニー・ヒル(鈴木蘭々)という女性に出会う。

そしてウィルは、父が本当に伝えたいことを知るのだった-。

引用元:https://www.tohostage.com/bigfish/story.html

作品感想

この作品で大切なことは、ホラ話や自分の話が大好きな父が、語らなかったこと

そして、ホラ話に込められた父の想いなのかなーと思います。

ストーリーのほとんどは、川平慈英さん演じるエドワードの妄想ともホラ話とも思えるファンタジーで埋め尽くされています。

その合間にリアルな父と息子のやりとりがあり、作り話ばかりして肝心なこと(なぜ父が家にいなかったのか)を話さない父に、怒りを募らせる息子のウィル。

そんなウィルに対して「お前はつまらないやつだ!」と会話を拒む父。

観ているこちらは、あんなに人当たりがよくて楽しいことが好きなエドワード(父)なのに、なんで息子のウィルにはそんなに頑なになっちゃうの?て思ってしまう。

でも、息子と妻を守るために耳に入れたくない話がエドワードにはあった。

本当はその出来事こそ、エドワードが今まで生きてきた中で最も偉大で、エドワードの性格なら話をもっと大きくして自慢も出来たはずなのに、家族のために黙っていた、

そこに深い愛情があるんですね….

もう、泣きました。。

そして、父の妄想のようなホラ話の意図が、最後の最後、ウィル自身が息子に伝える言葉でわかる。

父は息子に、想像力の翼を広げ、自分の人生を豊かにしてほしかったのだと。

ずっと、エドワードが歌ってきた曲を最後にウィルが歌う。間違いなくエドワードの想いはウィルに引き継がれている。

観劇した人、それぞれの人生に重ね合わせて自分ごとと置き替えられる作品なんじゃないかなぁと思います。

映画のビッグ・フィッシュも観ていましたが、映画がファンタジー色強めで、舞台は人間ドラマな部分が大きいかなと思います。

一回目で琴線に触れた人は、二回めみたらたぶん号泣….(私はボロボロ泣きました)

あと音楽が素晴らしく良いです。映画とは別の音楽で作曲は、アンドリュー・リッパ(Andrew Lippa)。

ブロードウェイ・ミュージカル『アダムス・ファミリー』を手掛けた方だそうです。

慈英さんの歌う冒頭の「ヒーローになれ」はいきなりクライマックスのような盛り上がりをみせるし、人生を楽しく面白くするのも自分次第、と明日への力強い一歩を踏み出せるような気がする。

再演で追加になった「二人の間の川」は、陽気なエドワードがみせる弱さに思わずぐっと来てしまう。

息子ウィルの浦井さんが歌う「Stranger」は、理解できない父を知ろうとする、息子なりの愛が感じられる。

美しいメロディーと心に突き刺さる歌詞でなんどもうるっと来ました。

あと、映像でみせる「ビッグ・フィッシュ」がとても効果的。ここぞという時に幻想的に表れます。

ファンタジーと現実を行き来する作品なのに、違和感がないのもすごい。

そして1幕ラスト。舞台いっぱいに黄色い水仙が咲き乱れ、ミュージカルの舞台でここまで花をみせてくれるなんて、本当に感動しました。

キャスト感想

エドワード・ブルーム:川平慈英(かびら じえい)

川平慈英さんは、テレビでよく見かけるし有名過ぎる方ですが、舞台をみるのは初めて。

まさかこんなに歌って踊れる方だとは思わなかったです。もともとミュージカル好きな方なんですね。演出の白井晃さんとは2000年の『オケピ!』からの付き合いなのだそう。

『ビッグ・フィッシュ』初演時に、白井さんはエドワード役は慈英さんしかいないと思ったそうですが、本当に慈英さん自身がエドワードみたい。

慈英さんよりも歌が上手な人や踊りが上手な人はいるとは思うんです(失礼!)でも、エドワードを演じられるのは、慈英さんだけ…と思えちゃうのがすごい。

この感覚は『ラ・カージュ・オ・フォール』で鹿賀ジョルジュと市村アルバンを観た時の感覚に近いかも。もちろん皆さん実力を伴なった凄い方たちですが、ご本人じゃないと出せない空気感があるというか。

慈英さん、すごく背が高いわけではなく(170cm)、息子の浦井さんが181cmだし、大男のカールが出てくる舞台では、むしろ小さくみえるのですが、舞台での存在感がすごくて、いるだけで慈英さんの周りがぽわっと明るく照らされているみたい。

エドワードは、人生をよりよくするために、冒険心を忘れずホラ話なんかもしちゃうんだけれど、その「生」を一生懸命生きているがゆえなんですよね。

そのエドワードの役柄通り、慈英さんが舞台でエドワードを生き切っているのがすごく伝わります。

エドワードの最後の曲では、感極まった慈英さんが歌えなくなった箇所があるんだけれど、それがまた良い…普通の舞台ならNGだと思うのだけれど、エドワードに関しては良い…

体を目いっぱい使ってタップしたり、喜怒哀楽をしているエドワードをみると、人生って受動的ではなく、楽しむ努力をしてこそ輝くもの!とも思えます。私も頑張ろう。

ウィル・ブルーム:浦井健治(うらいけんじ)

幼い頃は好きだった父のホラ話も、大人になると興ざめ。周りの空気を読まず自分の話ばかりする父を、子供扱いする息子の役。

浦井さんは父に反発する息子の役なのですが、真面目で頑なでありつつ、父を理解したいという思いが根底にある、繊細で素晴らしい演技でした。

私自身もですが、家族との関係は難しい時があって、赤の他人なら許せるのに、親だからまたは子だから許せない事ってある。

でも大切な存在だから放っておくのが難しい…愛情と怒りが紙一重な関係ともいえるかもしれません。

その複雑な「怒り」を表現するのに、強張った硬い声を出すだけではなく、浦井さんのウィルは怒りの中に「柔らかさ」があるんですよね。その柔らかさに、ウィルの複雑な愛情を感じることが出来る。もしかしたら、ご本人の人柄も影響しているかもしれませんね。

あと、『笑う男』の時に、浦井さん歌がパワーアップしたと思いましたが、今回も伸びやかなロングトーンを聞かせてくれました。

アラバマの子羊:霧矢大夢(きりや ひろむ)・夢咲ねね(ゆめさき ねね)・鈴木蘭々(すずきらんらん)

メインの役じゃないんですが(笑)、あまりにも可愛いシーンで心に残っているので…

エドワードの回想でのちの妻、霧矢さん演じるサンドラに出合うシーン。

サーカスで、3人娘がアラバマの子羊のダンスをする場面です。

このシーンが可愛くて好きすぎる~! ずっと続いて欲しかった。動画欲しい。

これじゃあエドワードがサンドラに一目ぼれするのも納得。

みんな可愛いんだけれど、個人的にはねねちゃん!足先、指先までピーンと伸びて、キレッキレのキュート。

正直、ウィルの奥さんサンドラ・ブルーム役より、ねねちゃんはこっちが好き。

霧矢大夢さんは、エドワードを支える懐の深い女性。エドワードへの愛情に泣き、くるくる白髪で背中の曲がったおじいちゃん姿は可愛かった。

鈴木蘭々さん、年老いたジェニー・ヒルの演技が味わいがありました。

 

やんちゃな演技に何度も笑ったドン・プライス役の藤井隆さんとザッキー・プライス役の東山光明さん。

皆さん何役も演じるのですが、藤井さんはドン・プライスに似たようなキャラでまた登場するのがツボ。テレビなど映像で活躍している人だからなのか、すごく面白いのに、わざとらしさが無くお芝居が自然で心地よかった。演出の白井さん、キャスティングの時に相当人選にこだわったのかなーと思えます。

圧巻の歌唱力だった魔女役のJKimさん。劇団四季の『キャッツ』でグリザベラを、『ライオンキング』でラフィキ役を演じた方で、それも納得の歌声でした。

そしてエドワードとの友情にじんわりきた巨人カールの深水元基さん。美しい動きを何度もみせくれた人魚役の小林由佳さん。

そしてROLLYさん。劇団☆新幹線の古田新太さんもそうですが、ご本人そのままなのに、その役になっちゃう人って存在が天才なんですかね?

どうみてもROLLYなのに、サーカス団の団長をはじめおとぎ話の世界にしっくり会いすぎでした。

エドワードとの絶妙なやりとりが楽しかったヤング・ウィルの佐藤誠悟さん、弁がたち父とは違う息子の性格がはっきり伝わってきた佐田 照さん。

素晴らしい方々の心温まる舞台で、とても満ち足りた気持ちで劇場を後に出来ました!

キャスト&スタッフ

キャスト

川平慈英
(エドワード・ブルーム)
浦井健治
(ウィル・ブルーム)
霧矢大夢
(サンドラ・ブルーム)
夢咲ねね
(ジョセフィーン・ブルーム)
藤井 隆、JKim、深水元基、佐田 照(Wキャスト)、佐藤誠悟(Wキャスト)、東山光明、小林由佳、鈴木蘭々、ROLLY

スタッフ

脚本= ジョン・オーガスト
音楽・詞= アンドリュー・リッパ
演出= 白井 晃
翻訳: 目黒 条
訳詞: 高橋亜子
音楽監督: 前嶋康明
振付: 原田 薫 Ruu
美術: 松井るみ
照明: 高見和義
衣裳: 前田文子
音響: 佐藤日出夫
ヘアメイク: 川端富生
映像: 栗山聡之
ファイティング: 渥美 博
歌唱指導: 安崎 求
演出助手: 豊田めぐみ
舞台監督: 小笠原幹夫
アシスタントプロデューサー: 清水光砂 柴原 愛
プロデューサー: 小嶋麻倫子 荒田智子
宣伝美術: 永瀬祐一
宣伝写真: 西村 淳
宣伝ヘアメイク: 森 哲也
宣伝スタイリスト: 青柳美智子

2019年『ビッグ・フィッシュ公演スケジュール』

2019年11月1日~11月28日(シアタ―クリエ)
2019年12月7日~12月8日(刈谷市総合文化センターアイリス)
2019年12月12日~12月15日(兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール)