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【2018年横浜】劇団四季「ノートルダムの鐘」まとめ

KAAT神奈川芸術劇場で公演されていた劇団四季「ノートルダムの鐘」が、とうとう終わってしまいました。

2018年4月8日(日)開演~8月28日(火)千秋楽で約5か月。あっという間だったなぁ。

途中で通う回数をカウントするの辞めたけれど、劇団四季のチケット購入履歴で確認してみたら25回でした。

自分史上、1公演でこの回数は最高です。でも横浜公演だけで50回以上観劇の人もいるのでほんとすごい~。

私は、今まで1公演で観劇回数10回を超えたことはなく、

複数回観劇する理由も、ダブルやトリプルキャストの組み合わせを観たいという理由が多かった。だから、純粋に舞台が大好きで通ったのは初めてです。

4月に開幕するのを今か今かと楽しみにしていて、

でもチケットをいっぱい買ったら飽きちゃうんじゃないか、なんてちょっと心配したりしたけれど、毎回泣いて圧倒されて、飽きるどころか、千秋楽終わったら腑抜けのようになっちゃいました。

キャストさんの感想をまとめてみます。ネタバレあります。

※今まで観劇した感想です。キャストさんの演技の方向性は、今後変わっていく可能性があります。

目次

カジモド

  • 飯田達郎
  • 田中彰孝
  • 金本泰潤
MEMO

パリのノートルダム大聖堂の鐘突き堂で暮らす20歳の青年。生まれながらに病気で背骨が曲がり醜い容姿をしているが、心優しい人物。叔父のフロローに「お前は醜いから外の世界には出るな。ここがお前のサンクチュアリー(聖域)だ」と育てられる。1年に1度のお祭りの日、彼は生まれて初めて勇気を出して外の世界へ出てみる。そこで受けた人々からの差別、ジプシーのエスメラルダとの出会い。エスメラルダに抱く恋心...

運良く3名のカジモド全員観ることができました。(横浜キャストに入っていた海宝さんは海外出演等あり、横浜への出演はなし)。どのカジモドも大好きで、ぼろぼろ泣きました。みんな印象が全く違って、それぞれのカジモドが最高に良かったです。

飯田達郎さん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

達郎さんのカジモドは観劇した後、胸が張り裂けそうになることが多かった...

私は、達郎さんカジモドには「陽」のイメージがあって、それは達郎さんの「精神年齢が幼い」という役作りが影響していると思います。

世間知らずで「外の世界の怖さ」を知らない。子供が突然、車の走る道路に飛び出してしまう事があるのは、車の怖さを知らないからで、それと同じようにカジモドの無垢さを感じました。

大聖堂から出ずに閉じこもって暮らしているカジモド。しかし空想で自分の世界を作っていて、想像上のガーゴイルと仲良く暮らしている。

だから「陽ざしの中へ」を歌うときの達郎さんカジモドは、この暗闇から外の世界へ行ける事に「希望」しか見出していなくて、その憧れの強さに、劇場全体が明るい日の光に包まれたように感じていました。すごく温かい「陽ざしの中へ」で。

観ているこちらは、「そうだよね。。。カジモド、お外出たいよね。楽しみだよね。」と、外へ出ることが許されない幼子に対する同情と愛情が入り混じった気持ちになって、達郎さんのカジモドが歌う「陽ざしの中へ」は、毎回泣けました。

8月27日の達郎さん千秋楽で、舞台上手の前タワーにカジモドが昇って「陽ざしの中へ」を歌っているとき、

ガーゴイルに扮している手島ジェアンと目が合い、手島さんがふわっと優しいほほえみを浮かべているのを確認できました。カジモドの希望とガーゴイルの暖かいほほえみで暖かい光が広がっていくように見えことが、とても印象に残っています。

この子供のようにはしゃぐ気持ちで外の世界に出た達郎さんカジモドが、外の世界で受ける差別。どんなに傷ついたことか。

自分に優しくしてくれたエスメラルダがフィーバスと惹かれあうのを見て、自身の現実を知りどんなに絶望したのか。

陽の印象が強い分、カジモドが現実世界で味わう実体験に、こちらも辛い気持ちになりました。

 

他に達郎さんカジモドで特徴的なのが、「障害」が見た目にわかりやすいこと。田中さんカジモドや泰潤さんカジモドは顔のゆがみはそこまでなかったのですが、達郎さんは、ぱっと見て体だけでなく顔にも障害があらわれていました。

これが、自分にとっては切れ味の悪いナイフでゆっくり刺されているような気持ちがあって、この作品の「怪物はだれなのか?」という問に、まさに自分が怪物なのでは、と思わされることがありました。

達郎さんカジモドがもし現実的に目の前に現れたとき、自分は一瞬びっくりしてしまうと思う。アンサンブルさんが演じた大衆のように暴力的になる事はなくても、クワイヤさんたちが見せた戸惑いや恐れを抱いてしまうのではないか、、とても考えさせられました。

 

カジモドを現実と理想の世界を演じ分けるように、演出から指示が出ているらしいのですが(ただしこれが全員への指示なのかはわかりません)、達郎さんは特にその差がものすごくはっきりしています。

人と話すときは、ゆがんだ顔でしゃがれた声でしゃべるカジモドですが、ガーゴイルと話していたり、理想の自分でいるときは、顔のゆがみも消えてきれいな声で歌っている。

2幕最初の「エジプトへの逃避」で、ガーゴイルやアフロディージアス達と「エスメラルダを助けに行くんだ!」ときれいな声(理想のカジモド)で歌っているのに、最後、ガーゴイルたちがいなくなって「いつまでも...」としわがれた声で歌うところが、悲しくてしんどかったです。

結局、ガーゴイルたちはカジモドのイマジネーションフレンドリー(想像上の友人)でしかなく、カジモドの中で理想の自分の時は勇ましいけれど、実際は、大聖堂でこんな風に一人ぽっちで、しわがれた声で独り言をいっているんだろう。。。というのを突きつけられているように感じて。

達郎さんカジモドに関しては、外の世界に行かなければ、深い傷を負う事もなく済ませられたのでは、と思う時もあったし、観劇回数を重ねるにつれて、逆に達郎さんカジモドが持つ優しさが、エスメラルダと出会うことで愛情に昇華し、やはり外へ出てよかったね、という時もありました。

達郎さん自身の演技、その日の舞台、他のキャストさん、または私の当日の感情など、いろいろな要因で受け取る私の感想もさまざまでしたが、どの公演も達郎さんは「カジモドを生き切った」というのが伝わる、本当に素晴らしいものでした。

カテコでは、他のカジモド役者さんたちは、わりと早くから笑顔を見せることもあったけれど、達郎さんはカテコ何回目かでようやく笑顔が出て、これもカジモドが体の中から抜けていなかったんだと思う。

書き忘れたけれど、もう一つ大切なこと。

カジモド役者さんたちは、みんな歌がとても上手ですが、達郎さんはここに「艶のある美声」が加わります。カジモドは歌がうまいのはもちろんですが、リサイタルみたいにきかせる役ではなくて、演技あっての歌だから、達郎さんの美声はむしろ封印されている感じ。

でも「陽ざしの中へ」や「石になろう」を2階席のように距離のある席で聞くと、美しい声が大砲のようにポーンと気持ちよく飛んできました。

田中彰孝さん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

田中さんカジモドはせつなくなる....という事が多かったです。

達郎さんが幼いカジモドなら、田中さんは大人っぽさのあるカジモド。20歳の青年らしく精神的にも成長していて、外の世界=100%幸せな世界、とは思っていない印象でした。

相手の目をじーっと見るのは、カジモドが耳が不自由だったからか、それとも自分が相手を怒らせていないか反応を確認するためか。

フロローから「お前は気持ちが悪い」と育てられ、自分に自信がなく、「陽ざしの中へ」の最初に『石の壁に隠れたままで..』と歌い始める時は、他のカジモドではみられない自虐的な表情を浮かべる。希望を探して光に顔を向けてもその差し込む光が強くて思わず顔を背けてしまう。。

でもエスメラルダが自分に優しくしてくれた。世界の頂上でようやく満面の笑みをみせる田中さんカジモドが泣けて仕方なかったです。

なんだか田中さんカジモドって長男的な性質を感じるんですよね。

親の反応を絶えず伺い、良いことがあっても100%信じられず、用心深いというか。これは私が長女だからかもしれませんがw

他のカジモドがエスメラルダが優しくされて無邪気に嬉しがっていても、田中さんカジモドは「自分はダメかもしれない」という余地を残していたと思います。

例えば、エスメラルダの事を考えていながら大聖堂から街を見下ろし、次の会話があるシーン

カジモド「エスメラルダだっ!」
ガーゴイル「あれは違う」
カジモド「そうだね」

金本泰潤さんの「そうだね」は、自分間違えちゃったよーという感じで、ガーゴイルに甘えながらしゃべっているのに、田中さんカジモドはこの世の終わりかと思うくらい落ち込みながら「そうだね」と言う。

彼女じゃなかった、と自分で思っていたマイナスの現実と一致してしまった、と思えました。

あと「奇跡求めて」のエスメラルダとフィーバスが惹かれあうシーンでは、田中さんカジモドは、他のカジモドと違って、ここも自虐的な表情になる。

「わかっていた。自分にはこんな幸せこないんだ」

そう感じさせるところがせつない。

そして、「石になろう」では、味方だったガーゴイルたちに嫌味たっぷりにお辞儀。この仕草は、精神的に大人っぽくなってしまったカジモドだからこそ湧き上がる、複雑な感情を表しているように思えました。

田中さんカジモドはネガティブな感情を持つカジモドで、だからこそ最後にエスメラルダを助けようと、ただその思いだけでまっすく行動に移すシーンは、気持ちの弱さよりもエスメラルダへの想いが勝ったなと強く感じます。

救出シーンでは、ガーゴイルたちと溶けた鉛を「焦がせ!!!」と声をあげて言う時が何度かあり、迫力がありました。

私が想いたいだけだけれど、田中さんカジモドは、エスメラルダに出会えてきっと幸せにだったはず。辛い結末だけれど、不安、卑屈、恐怖。。。そんな感情よりも最後は勇気が勝ったのだから。

金本泰潤さん

横浜公演デビュー

横浜公演がデビューだった金本泰潤さんのカジモド。

達郎さん、田中さんカジモドも素晴らしかったけれど、個人的には、もしかしたら泰潤さんカジモドが一番好きかもしれないです。

今の段階でなので、今後はまた変わるかもしれないし、達郎さんも田中さんも大好きなカジモドであることには変らないです。

泰潤さんカジモド観劇後も泣けて仕方ないんだけれど、終演後、胸に暖かいものを感じることが多かったです。

私の印象だと泰潤さんカジモドは、この作品が意図しているだろう「(心)が優しい(見た目)がモンスター」に一番しっくりくるかなぁーと思いました。

泰潤さんカジモドは、田中さんみたいな不安でせつない表情をみせることが多いのですが、田中さんカジモドのような卑屈さではなく、「醜い」といわれても、そのまま素直に受け入れているピュアさを感じました。

けなげなところは、達郎さんカジモドに共通する点ですが、泰潤さんカジモドは忠犬のように、ただ大切なご主人様やエスメラルダを守りたい!という思いにあふれているように見えます。

フィナーレで横たわるエスメラルダの着衣が乱れていれば、直してあげたりと、ちょいちょいやさしさがあふれ、大好き。

残念なのは、回数をあまり見られなかったこと。途中、キャッツの練習?か何かで抜けて、8月に戻ってきたけれど、途中でまたいなくなっちゃいました。。

5月のカジモドデビューしたても素晴らしかったけれど、だんだんカジモドが体にしみこむようになって、6月の「陽ざしの中へ」では、ここを「ぬ」けだし「ふ」みだそうと、ぬとふを強く言うことで、カジモドが思い切って外の世界へ飛び込む決意が感じられるようになったのがより素晴らしかったです。

達郎さんもこれを取り入れたのか?達郎さん千秋楽の日は同じ個所を強く言っていました。

他にも、「石になろう」の演技で、目を閉じてぱっと目を見開いた瞬間にガーゴイルの姿がいなくて、頭の中からガーゴイルが消えてしまった!というのが強く伝わるようになったり、

フィナーレでは、耳に手をあてて「あぁぁぁ」と泣き出す演技をするようになり、あ、お母さんの声が聞こえているんだね。。。。と泣けて仕方なかったし、あ~もっと泰潤さんのカジモドが深まっていくのを観たかった(´;ω;`)

 
名古屋ではこの3人が中心になるのかしら?

新しいカジモドが出てくるのかな。名古屋に通うことはできないけれど、3人のカジモドをまた観たいし、新しいカジモドもみたい。

フロロー

  • 芝清道
  • 野中万寿夫
  • 村俊英
  • 川口竜也
MEMO

ノートルダムの大助祭。弟のジェアンを病でなくし、その子であるカジモドを親代わりに育てている。自分は清く正しい道を歩んできたと信じる聖職者。街の秩序のため、ジプシーを追放しようとするが、そのジプシーの一味であるエスメラルダの虜になり、彼の理性は欲望に支配されてしまう。

フロローも演じる役者さんによってかなーり違いました。カジモド以上かも?アニメ版の悪人に見えるフロローとは違って、ミュージカルでは原作よりに描かれているので、フロローも間違いなく主人公の一人でとても可哀想に思えることが多かったです。

芝清道さん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

CDキャストなだけあって歌が素晴らしかったです。特にヘルファイヤー(地獄の炎)は、舞台から音の圧がすさまじくて、この1曲のために観劇料金を支払えるくらい。2017年に最初にノートルダムの鐘をみたときも、芝さんのヘルファイヤーがすごく印象に残っていたかも。

芝さんのフロローは、エスメラルダに出会う以前から、強がってはいても、隠しきれない弱さがにじみ出ているような人物にみえました。

自分の欲望を自覚しているからこそ、聖職者の道に没頭し、誘惑を退けるような。

それがエスメラルダに出会うことで、欲望をぎりぎり抑えていた砦が壊れてしまったような感じ。

自分の弱さを認めたくないから、カジモドに対して支配的なんだけれど、最後、よろよろとカジモドのところへきて「これで元の世界に戻れる・・・」というシーンでは、逆にカジモドこそがフロローにとって依存先であったと思えました。

弱さ、醜さ、愛情・・・それが駄々洩れの人間くさいフロローで、現実世界にもいそうです。

芝さんフロローは聖職者じゃなくて、町の陽気な肉屋さんとかパン屋さんだったら、もっと幸せな人生を送れていたと思うのです。

芝さん確か5月でノートルダムを抜けてソンダンに行ってしまわれました。。他のフロローも素晴らしかったけれど、もっと見たかったよ~

野中万寿夫さん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

横浜公演の出演回数が多く、私も何度も観たのですが、観れば観るほど味わいが出てきた、大好きなフロローです。

野中さんはかなり原作に近いフロローかな、と思います。真面目な聖職者で、野中さんご自身が白髪なこともあって、学者のようにみえます。

ごくごく真面目に暮らしてきた独身男性が、女性に溺れてしまい、身の破滅をしてしまった...今でもよくありそうな話で、現実味があり、ぞくっとしてしまう怖さがありました。

音圧のすさまじさは、芝さんフロローがすごいと思うのですが、野中さんフロローのヘルファイヤーは、バックにいる男性アンサンブルさんが演じる炎?と一体化しているようで、毎回鳥肌がたっていました。しつこいけれど、フロローのヘルファイヤー一曲で観劇料金の価値がある。

野中さんは演技が上手と評判が高く、よくよくみてみると、ヘルファイヤーの時に歌舞伎の見切りのように手を動かしていたり(これが格好いい)、欲望にひっぱられる自分の手を抑えるしぐさがわかりやすかったり。

あとはカジモド登場シーンでは、自分のすそをバッと翻すことで、カジモドの登場がより鮮明になるように、とメリハリをつけるなど、観劇しているこちらはとても見やすい。

芝さんや川口さんに比べるとあっさり感じるかもしれませんが、個人的に、ノートルダムの鐘をカジモドを中心に観たいので、野中さんだと主張しすぎず、非常にバランスよくみられる、というのがとても良かったです。存在感がない、というのではなく、自分自身だけでなく周りも映えるという意味で。

村俊英さん

横浜公演デビュー

村さんは、アニメ「ノートルダムの鐘」でフロローの歌を担当している、元祖フロローといえる方。

村さんフロローが登場した当初、とても温かみのあるフロローでした。カジモドの顔を優しくタオルで吹いてあげる様子は、他のフロローはゴシゴシと男性らしいんだけれど、村さんはそっと優しく拭くので、父親というより母親っぽかった。

冷徹さや傲慢さを感じず、とても良い人に見えたのに、エスメラルダに出会った後は、まるでジキルとハイドのように、新たな人格が出てきてしまったよう。

芝さんフロローや野中さんフロローはエスメラルダがいなくなった後、カジモドとまた元通りに暮らせる(カジモドが承知しないとは思うけれど(;´∀`) とも思えるのですが、村フロローは新たな人格が生まれてしまったので、決して戻れないだろうなと思えました。

温かい人格者のようで、エスメラルダが登場する時は、乙女のようにちらちら恥じらいながらみつめる村さんフロロー(笑)

そんな村さんフロローが好きでしたが、公演回数を重ねるにつれ、表情がだんだん冷徹になっていくように感じたんですよねー。

勝手な思い込みかもしれませんが、フロローという役に毒されてきたのかなと思いました。

川口竜也さん

横浜公演デビュー
劇団四季ではない外部キャストの川口さん。

SNSでもかなり話題になりましたが、4名の中で1番強烈なフロローかも。

最初観た時は、パワハラが強烈にみえて怖くて仕方なかったのですが、振り返ってみると、一番可哀想なフロローだったなぁと思えます。

唯一の家族であった弟ジェアンへの思いが深くて、ジェアンを失ってしまったことが、この物語の全ての始まり、と改めて気づかせてくれるフロロー。

ジェアンへの愛情が深いんだけれど、同時にジェアンの犯した罪(堕落的な生活とジプシー女性との駆け落ち)を憎んでいて、他のフロローたちはエスメラルダと出会ってから崩れていくのに、川口さんフロローの場合、ジェアンを失った時から壊れていたように思えました。

とても愛情に飢えているフロローに見えたんですよね。みなしごの兄弟で、道楽的な弟ジェアンの親代わりも務めていたフロローですが、親はいなかったし教会は厳しいし、川口フロローは温かい愛情に包まれた経験がなかった。

だから愛情ではなく道徳で自分を律し、ジェアンやカジモドにも「自分を抑えることが大切」と説くんだけれど、それは正しかったのか。

自分の満たされない愛情を、道徳で抑えていた川口さんフロロー。エスメラルダに出会うことで、完全に壊れてしまいます。

川口さんフロローが登場して2~3週間してからか。ヘルファイヤーで川口さん、目をぎょろっと見開いたまま首回しをするようになり、その動きがホラー映画に出てくる人形みたいで、

ああああ!!人間捨てた...!!とわかる演技が加わるようになりました。

最初、このシーンをオペラグラスで観ていた時は、あまりの怖さにオペラグラスを外してしまったくらい(^^;

このシーンからは悪魔みたいなフロローになってしまい、売春宿で自分の命令に背いたフィーバスに、身体を刻むようにみえる大きな動作で十字架を切る仕草をし、

大聖堂を襲撃する際は、副隊長のフレデリックを本気で突き飛ばしながら暴走しているし、完全に狂っている様子でした。

最後、よろよろと大聖堂のカジモドのところにやってくるシーンでは、彼にとって魔女であるエスメラルダを倒すことが出来て、命拾いした...と本気で思っているので、川口さんフロローにとっては、エスメラルダが生き残るという選択肢はなかったんだろうなぁと思えます。

それにしても川口さんフロローと組んだ時の、カジモド役者さんたち。かなり本気で怯えてみえる事も多くて可哀想でした(´;ω;`) 一番一緒に暮らしたくないフロローかも。

エスメラルダ

  • 岡村美南
  • 宮田 愛
  • 松山育恵
  • 相原茜
MEMO

ジプシーの美しい踊り子。弱い人は守らなければいけないと考えている。カジモド、フロロー、フィーバスから思いを寄せられる。カジモドの最初の友達になる。

岡村美南さん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

エスメラルダ役者さんたち、皆さん歌もダンスもすごく上手なのですが、

美南さんは歌が飛びぬけて上手です。個人的にはノートルダム大聖堂のバラ窓をバックに歌うゴッドヘルプが、神々しくて好き。

慈悲深く達観している雰囲気があり、美南さんの大人びた雰囲気がそのまま出て、他のエスメラルダに比べて精神年齢が高そうに見えました。

だからからか、カジモドが抱くエスメラルダへの想いは、美南さんエスメラルダだと高嶺の花過ぎてかなり遠い存在に感じます。

美南さんももっと見たかったのに、後半は出演されず。キャッツやパリのアメリカ人の公演の方にいらっしゃるようです。美南さんならなんでもできそうですよね。

宮田 愛さん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

横浜公演で最も出演回数が多かった、宮田さんエスメラルダ。シングルでかなり長い間頑張っていらっしゃいました。

私にとって横浜公演のエスメラルダ=宮田愛さんといえるほどで、大好きなエスメラルダ。

どのエスメラルダもダンスがすごく上手ですが、宮田さんはもう一段階さらに凄い。

タンバリンのリズムでのばねのようにしなやかな踊りが本当に美しくて、これでカジモド、フロロー、フィーバスが心を奪われてしまう、というのがとてもよくわかるエスメラルダでした。

宮田さんエスメラルダは、ほんとうは小さな女の子なんだけれど、せいいっぱい生きて、大人びた話し方をする事もある。ジプシーなので差別される人間の気持がわかるから、自然とカジモドに寄り添える。

宮田さん同様、連投の多かった佐久間フィーバスと、処刑前の夜に歌う「サムデイ」がとても印象的で、

未来への希望を願って歌う時もあれば、希望なんてなくてただただ絶望を感じて歌う時もあり、

美しく感じる日もあれば、悲しく感じる日もありました。

松山育恵さん

横浜公演デビュー

松山さんは地に足についたようなエスメラルダで、地を張って生きていくジプシーらしさがありました。4名のエスメラルダの中で、最もジプシーらしいかな。

横浜公演デビューとは思えないほど、肝が座った感じで落ち着きがあります。

低音の歌声、踊りもすごく素敵だったし、もっとみたかったのに出演回数が少なくて残念。キャッツの方にいってしまったようですが、とても素敵なエスメラルダだったのでまたぜひぜひ見たいです。

相原茜さん

横浜公演デビュー

8月に登場した4人目のエスメラルダ。すごく色っぽい。

今までのエスメラルダは、生きていくために女性であることを売りにしていて、色っぽく振舞っていたと思うのですが、茜さんの色っぽさって、大人の女性の色っぽさじゃなくて、小学生くらいの女子でもたまに色っぽい子がいるけれど、それに近い感じで天性のもの。

計算じゃない分、逆にたちが悪くて、フロローからしたら抑えようとしても抑えられない魔女的な吸引力があったんだろうなぁというのがとてもしっくりきました。

デビューしたての時はかなり頑固で、味方のクロパンにもつんつんしていたけれど、最後の方はだいぶ柔らかくなっていました(笑)

8月にデビューで、まだまだエスメラルダとして進化していくように感じたので、今後が楽しみです。

フィーバス

  • 清水大星
  • 佐久間仁
  • 光田健一
MEMO

大聖堂警備隊隊長。フロローに仕えるが、疑問を抱き途中で命令に背く。エスメラルダと惹かれあう

清水大星さん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

美声な上に歌が素晴らしいフィーバス。流石のCDキャストです。

さらに戦場帰りらしい、荒々しさも持ち合わせ、隊長!という呼び名にふさわしい堂々とした印象の強いフィーバスでした。

(実際のご本人は隊長らしいところがないとオフステで話されていました^^)

聞いていて気持ちが良いし、何回も観たかったフィーバス.....なのに、早々に横浜公演から抜けてしまわれた。私がこの作品を何度かみて、そろそろ1人ずつじっくりみられそうな準備が出来た頃だったのに。

どこいったの?清水さん...と思ったら、名古屋のノートルダムの鐘のお稽古写真に写っていらっしゃったので、名古屋では観られそうですよ!

佐久間仁さん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

横浜公演のフィーバスで最も登場回数が多く、私も何度も観たフィーバスが佐久間さん。

何度か書いているのですが、2017年の公演では、声量が少し弱いように感じたのに、2018年の横浜では、そんなことなく、素晴らしい歌いっぷりでした。

そして佐久間さんの繊細さのあるフィーバスが素敵。

登場する時は、ちゃらい感じを出しているのに、戦争の話になると表情に陰りがでる。

フロローからエスメラルダを捕まえるように指示され、「探し出せエスメラルダ」と歌いながら隊を率いているときは、視線が下に落ちちゃって、フィーバスの迷いが伝わってきました。

そして、宮田愛さんエスメラルダと歌うサムデイが本当にせつなくて。

この二人の組み合わせだと、「世の中からいつか差別がなくなる素敵な世界」への希望を歌っているのに、

当事者の二人には絶望しかなくて、立っていることすらできず、お互いすがりつくように歌っていたり、

そんな中でも一筋の希望の光があるように見えたりと

連投が多く、自然と組み合わせが増えたお二人におこる変化に、泣けました。

生の舞台はほんと一瞬だなぁ

あと、佐久間さんフィーバスはカジモドに対してすごくフラット。

大聖堂でカジモドとエスメラルダを助けに行くと話す時、カジモドに対して佐久間さんは本気でムキになって、まるで10代の男の子みたい。

他のフィーバスもカジモドへの差別や哀れみがなくて公平ですが、特に佐久間さんからはカジモドへのフラットさを強く感じました。

光田健一さん

横浜公演デビュー

三人目のフィーバスの光田さん。

歌も声も綺麗で、ほかの二人同様、長身ですてきなフィーバスです。

他のフィーバスと違うのは、お坊っちゃん的な育ちの良さが感じられるところ。

エスメラルダとは生きてきた世界がまったく違うと感じるフィーバスで、エスメラルダと噛み合わないのが自然にみえる。

だからこそ「奇跡求めて」で、この地を去りまた新たな安住の地を探さなければいけないエスメラルダやジプシーに、フィーバスが「自分もついていく」と伝えた時、

エスメラルダが、なんでこの人はわざわざ今の場所を捨てて?と心底から驚き、そんなリスクを犯すフィーバスへの想いを強めた、と納得感がありました。

このシーン、一緒に助けに来たカジモドは、体が不自由だからエスメラルダに付いていくことができず、可哀想で泣けるんですけれどね。。

フィーバスの三名は身長が高く、バックステージツアーの際に見せて頂いた、キャストさんたちが着る灰色のフード付きコードが、フィーバスのものだけ丈がとても長かったです。

クロパン

  • 阿部よしつぐ
  • 賀陶馬ワイス
MEMO

ジプシーの王様で一味を率いるリーダー。頭が切れ、野性味があり、仲間を見捨てない情の深さがある。

阿部よしつぐさん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

阿部クロパン、最高 of最高!!

ジプシーの親分らしい油断のならない鋭い目つき。

ワイルドで、自分の力でジプシーのリーダーに伸し上がった力強さを感じます。

トプシー・ターヴィーのダンスでは、誰よりも床をダンッダンッと強く踏むから、阿部さんの周りの床をが、波打つように毎回浮いていました(;´∀`)

本物のノートルダム大聖堂と同じく舞台も白黒の床にしているので、この床が阿部さんの足で波打つと、ターミネーター2で液状化したターミネーターが白黒の床から出てくるシーンを浮かべちゃう(^^;

床はベニヤで作られているので、横浜公演のラストまでに、いつか穴が開くんじゃないか心配でした。

多くの人がSNSで言っていることですが、阿部さんのクロパンで特には大好きなのが、冒頭とフィナーレの「パリの朝」の言い方の違いです。

冒頭では、「これから物語りが始まる」という感じで「パ」をはっきり発音してますが、最後のフィナーレでは、緊張をとくように、柔らかい「パ~」という発音になっています。

これにより、私たち観客が、ノートルダムの世界から戻ってきたように感じられました。

この違いはCDでも聞けますが、舞台ではフィナーレの怒涛の展開のち、阿部クロパンの空気をかえる「パリの~」を聴くと、緊張がふっと抜けます。

賀陶馬ワイスさん

東京公演→京都公演→横浜公演キャスト

阿部さんがワイルドなら、ワイスさんはおちゃめなジプシーのおやじ。

実力でのし上がったというより、調子の良さで周りから愛されてリーダーになっちゃった、と見えました。

ほんとうは、横浜公演ではあともう一人、百々義則さんがクロパンにキャスティングされていましたが、出演されず。名古屋には出るのかしら?

アンサンブルさんたち&クワイヤさんたち

ノートルダムの鐘は、アンサンブルさんとクワイヤさんが本当に重要です。

カジモドの友達であるガーゴイル、カジモドを罵倒する大衆、両親、.....一瞬で役を代わるアンサンブルさんたち。

舞台転換を、ほとんどアンサンブルさん達の手で行っているので、都度変わる役を演じ歌いながら、大きな階段を素早く移動させているアンサンブルさん達の重労働ぶりは、ただただ頭が下がります。

そして聖歌隊、大衆..この作品の土台を支えるクワイヤさんたち。クワイヤさんの中には、オペラ座の怪人で主役のファントムをうたった高井治さんや、CMでもおなじみの永井崇多宏さんといった、他の舞台ではプリンシパルになるレベル方がそろっていました。

ここでは、特に印象に残ったアンサンブルさんを書き留めます。

安部三博さん

男性アンサンブル2枠、ルイ11世

声が毛布のように柔らかく包み込むようで、ほっとする優しさを感じます。

「世界の頂上で」で、エスメラルダがカジモドを追ってきた時、はじめてフロロー以外の人間が鐘突き塔に来たので、カジモドもガーゴイル達も大慌て。

この子と仲良くなって大丈夫?信用していいの?

カジモドがどうしたらよいかわからない時、

安部さんガーゴイルが「仲間になれそう~」と、優しい声で歌うんですよね。

焦って、てんぱっているカジモドを安心させるようで、ほんとうに優しい声...泣けます(´;ω;`)

そしてエスメラルダが昇ってきて、カジモドもガーゴイルもじっと微動だにしないシーンでは、安部さん、一人で変顔した状態で止まって(こういう顔のガーゴイルもいそう)、私の知ってる限り一度も瞬きをしていませんでした!時間が決して短くないのに。

オフステのトークで、安部さんは緊張しないとおっしゃっていましたが、いい意味でリラックスして演じてるのでしょうか。柔らかい心がそのまま声を通して、伝わってきます。

平良交一さん

男性アンサンブル6枠

ノートルダムの鐘のを聞いた時から、すでに目立って美声だった平良さん。

低音イケボで、元オペラ歌手というのも納得です。父とノートルダムの鐘を観劇した時も、平良さんと阿部クロパンの声に感動していました。

いちど、平良交一さんのヘルファイヤーを聴いてみたい!

佐藤圭一さん

男性アンサンブル1枠、ジェアン

美声続きで、フロローの弟ジェアンも演じていた、さとけいさんの声もまた素敵でした。

「息抜き」の歌で、戦場戻りのフィーバスを囲み男性アンサンブルさんが次々と歌を連ねるシーンで、平良さん→さとけいさんと続く低音コーラスが最高です。

大空卓鵬さん

男性アンサンブル3枠

ラポンテでの軽快なダンス。

なんでこんなにクルクルと軽やかなの?私と同じ人間とは思えない。

このシーンは、大空さんにいつも目がいきます。

高舛裕一さん

男性アンサンブル5枠、聖アフロディージアス、リッチマン

聖書のお話で出てくる聖アフロディージアスを演じる高舛さん。ご本人はイケメンですが、アフロディージアスはすごいおじいちゃんでした(笑)

重要な役をいくつか演じている高舛さんですが、特に印象に残ったのが、エスメラルダ処刑シーンで「一民衆」を演じていた時。

高舛さんは、腕組みをして足を柱にかけ、興味があるんだか無いんだかわからない表情をし、まるで暇つぶしに処刑されるエスメラルダをみているようでした。

このシーンでアンサンブルさんに目がいくようになったのは、私自身が観劇を何度も重ねてからなので、以前はどうだったかわかりません。

なんだかここでも、この作品のテーマである「誰が怪物なのか?」と考えさせられちゃう高舛さんの一民衆のふるまいでした。

小川晃世さん/平木萌子さん

女性アンサンブル1枠、フロリカ

美しいソプラノを歌うお2人。フィナーレの母フロリカになってカジモドへ向かって歌うシーンが、美しくて最高に好きなですが、このシーンがくると終演まであっという間という悲しみ。

母親を兼ねた役だからか、ガーゴイル役の時も、ちょっとカジモドに優しい気がします。

原田真理さん/小島由夏さん

女性アンサンブル4枠、売春宿の女主人

このお2人もカジモドに優しいアンサンブルさんだと思います。1~3枠さんが若い設定で、4枠さんは年が上の設定なのかな。カジモドを見つめる目が慈悲深いように見えます。

(ちなみに舞台監督さんのお話によると、女性3枠さんが一番カジモドに対して辛辣な設定なんだそうです。)

横浜公演の千秋楽で、「世界の頂上で」でオペラグラスをカジモドとエスメラルダに合わせていたら、たまたまその後ろにいた4枠の小島由夏さんが目に入りました。

小島さんは、カジモドではなくエスメラルダをじーっとみていて、最初はすごく険しい顔だったのが、だんだんと表情が柔らかくなってエスメラルダに笑顔を向けて。

初めてフロロー以外の人間がカジモドのところにやってきたから、ガーゴイルたちも

「他人を信じれば危険だよ」と、警告もしているんですよね。

そして、ここでエスメラルダを警戒しながら見ていた女性の4枠さん(この日は小島さん)が、

「でもこの子は違う」ってエスメラルダを認めるようになるんですね。(この後に安部さん2枠が「仲間になれそう」と続く)

このシーンって、カジモドとエスメラルダにスポットライト当たっているし、カジモドのドキドキが伝わる場面なので、ずっとカジモドやエスメラルダばかり見ていました。

でもスポットライトのあたっていない暗がりの中でも、アンサンブルさんはこんなに表情の変化をしていたんだ..と改めて感動しました。

世界の頂上ではもともと大好きなシーンでしたが、ますます好きになっちゃう。

横浜公演の千秋楽の挨拶

千秋楽では、野中フロローより挨拶がありました。

「ここ横浜では、約5ヵ月にわたる公演でのべ15万人の方々にご来場いただきました。『ノートルダムの鐘』は、次の公演地・名古屋へと向かいますが、ここ横浜でご覧いただいたお客様お一人おひとりの心の中に、美しい鐘の音がいつまでも鳴り響くことを願っております」
https://www.shiki.jp/navi/news/renewinfo/031149.html

シンプルで、でもノートルダムの鐘らしい挨拶。とても美しいと思いました。

横浜公演が終わって以来、感情がひどく動かされそうで怖くてCDが聴けなかったけれど、劇団四季の公式さんが名古屋に向けてのお稽古写真を公開しはじめてから、そんなに名古屋に行けない私も気分が盛り上がってきました(笑)

東京初演以来、約2年ぶりに、演出家スコット・シュワルツ氏やアメリカのクリエイティブスタッフがみえて、お稽古を重ねているそうです。

劇団四季公式さんから、続々とお稽古の様子がツイッターで流れ、

なんと曲紹介の動画まで!!

クロパンを演じた阿部よしつぐさんのインスタによると横浜の時点で、素晴らしく深いと思いましたが、どうやらさらに深くなるそうです。

名古屋公演もきっと熱いものになるでしょう。

鐘をいま打ち鳴らせ!

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