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2016年貴婦人の訪問(プレビュー)を見に行った

去年2015年に日本初公演となった貴婦人の訪問、今回初めて観に行きました。

ウィーンの主演キャストはエリザベートオリジナルキャストコンビのUwe Kroegerさんとpia Douwesさん
日本の主演キャストは、山口祐一郎さんと涼風真世さん

・・・という事で、会場でプログラムを買うまで私はずっと、シルヴェスター・リーヴァイさんとミヒャエル・クンツェさんコンビの曲と歌詞だと思っていました。

エリザベート、モーツァルト、レベッカでおなじみの面々ですからね。PiaさんはMozartには出演されていなかったと思いますが..

実際のところ貴婦人の訪問は、歌詞:ヴォルフガング・ホファーさん、音楽:モーリッツ・シュナイダーさん、マイケル・リードさんによってつくられた作品です。

去年観ていない私にとってはツイッターでの「大人のミュージカル」という評判にワクワクしながらプレビュー会場である北千住丸井にあるシアター1010(センジュ)に向かいました。

貴婦人の訪問キャスト

アルフレッド 山口祐一郎
クレア 涼風真世
マチルデ 瀬奈じゅん
マティアス(市長) 今井清隆
クラウス(教師) 石川禅
ゲルハルト(警察署長) 今拓哉
ヨハネス(聖職者) 中川昇

実力のあるベテラン揃いの出演者!プレビューでしたが正直、もう千秋楽近くの出来といえるのでは?と思えるほど安定感があり、安心してみていられる舞台でした。

クレア、涼風真世さん、クレア!

(ネタバレを含みます。)

皆さん本当に素晴らしかったのですが、中でも圧巻だったのがクレア役の涼風真世さん。

クレアは、恋人のアルフレッド(山口祐一郎さん)に裏切られ、住んでいたギュレンの市民からも蔑まれ町を追い出されてしまい、復讐のために大富豪となってギュレンに戻ってくる役です。

その復讐の内容とは、困窮したギュレンの町を多額の寄付で援助する条件として、かつての恋人アルフレッドの死を望むというもの。

最初は、復讐のために戻ったとは周りに見せず「何を考えているかわからない」と言われているような表情でいるのですが、お綺麗な顔が氷の能面をかぶったようにみえてこれが怖くて怖くて。

そのうち、復讐のために戻ってきたのだと、憎しみをあらわにする場面では、涼風さんのあの細い身体からとは思えない地鳴りがするような声で歌い上げ、

そしてアルフレッドとの愛情を思いだす場面では情感豊かにと、クレアの感情にぐいぐいと引き込まれ、こちらもついクレア目線でアルフレッドや市民を見るようになってしまいまいした。

最初、あらすじをさらっと見た段階では、憎しみってそんなに長く持つものが不思議だったのですが(嫌な事は早く忘れてしまいたいタイプ)、涼風さんのクレア目線で舞台を追っていくと、1幕ラストでは元恋人のアルフレッドは死んで償うべきと思っちゃったし、

でも実際にアルフレッドが死んだ2幕の最後では、クレア同様強い悲しみを感じました。

この自分の心の動きが、当初自分自身説明つかなくて(2幕はクレアの希望通りアルフレッドが死んだのだから、そこでクレアが涙を流すのはおかしいという感想があっても不思議じゃない)、なんでだろうとずっと考えていたのですが、

・復讐のためと言ってやってきたクレアだけれど、根底にあったのはアルフレッドへの愛

・自分のそばにいない人を長年憎しみ続けるのはすごく難しいが、それが愛情だったとすると納得がいく

・クレアが寄付するという事で、ギュレン市民までもアルフレッドの死を望むようになり、人々の弱さや愚かさが露呈する中、アルフレッドだけが最後に自分の弱さを認めクレアを受け入れた

こう考えると説明がつくのかなと思いました。

ただ、たぶん貴婦人の訪問の解釈は、舞台をみた観客それぞれにゆだねられているもので、自分もまた2回、3回と舞台を観ていくうちに解釈が変わってくるかもしれません。

文字にすると感情の流れが急でちょっとわかりづらいのですが、このわかりづらい点を納得させる演技と歌が涼風さんにはあって、もうクレアに幸せになってほしいと最後は祈るような気持ちになっていました。

涼風真世さんお綺麗で前から好きでしたが、今回の舞台を観てますます好きに。今でも十分フェアリーな方です。

可愛さがこの舞台の救い。アルフレッド山口祐一郎さん

私は山口祐一郎さんといえば、ダンスオブヴァンパイアのクロロック伯爵やエリザベートのトート、モーツァルトの大司教、王家の紋章のイムホテップのような、マントの役が好き。

理由は格好いいから(笑)

アルフレッドは残念ながらマントを付けない役ですが、祐一郎さんのおちゃめな所が、アルフレッドに出ていてとても良かったです。

貴婦人の訪問は、クレアは怖いし(本当は愛情がたくさんある人だけれど)、アルフレッドの友人たちは大金に目がくらんでアルフレッドを裏切るし、重い風刺がかったテーマなミュージカル。

そこへ、アルフレッドの人間味あふれるおちゃめさが良い感じに味付けされて、いい感じで息抜きできました。

アルフレッドの軽い感じが、クレア目線でみると正直むかっとする事もあるのですが(笑)、最初は人としての弱さやずるさが観られていたアルフレッドは最後、覚悟を決めてクレアと自分の死を受け入れた時、この二人の愛情が昇華した、そんな印象を持ちました。

重厚なアンサンブル!耳福間違いなし

歌が上手なキャストさん揃いですが、マティアス(市長・今井清隆さん)、クラウス(教師・石川禅さん)、 ゲルハルト(警察署長・今拓哉さん)、ヨハネス(聖職者・中川昇) さんの四重唱も素晴らしかった!

友人のアルフレッドの死を願うなんてとんでもない、でも大金がはいるぜ、という葛藤、策略などそれぞれの思惑が入り乱れた曲で、もうこれぞ合唱の力!しかも歌が最高に上手な方々だから鳥肌がたつほどゾワゾワしました。

メロディーが難しく、あまり耳には残っていないのですが、感動は覚えているから早くまた聴きたい!

この4名、個性があって皆さん面白く、特にたぬきおやじのように見えた今井清隆さんがツボにはまりました。嫌な役なのですが、今井さん歌も演技もうますぎるから目が離せないw

カテコまでが貴婦人の舞台

アルフレッドの死で貴婦人の訪問は物語が終わります。

クレア目線で途中から舞台を観ているので、悲しみの残るこの終わり方はもやもやが残ります。

でもカーテンコールの最後、山口祐一郎さんと涼風真世さんが腕を組んで、ほほえみながらひょこひょこと歩く姿を見て、

「クレアの来世は、こうやってアルフレッドと幸せなはず」と、救われた気分になるから不思議。

日本版、貴婦人はカテコのお二人の姿を見届ける所までが、ストーリーかなという気にもなりました。

涼風さん、舞台ではあんななに怖かったのに、まんまるい目で、はにかみながらカテコに出てくるから、もう可愛くてかわいくて。

ほんとう、フェアリーですよ。

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