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東宝ミュージカル「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~」感想@シアタークリエ

日比谷シアタークリエに「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~」を見てきました。

実在した天才ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニと彼にまつわる伝説を絡めたストーリーで、冗長に思える部分もありましたが面白かったです。

音楽がすごく綺麗。パガニーニのカプリースやラ・カンパネラの旋律を奏でるヴァイオリン奏者さんの演奏が素晴らしかったです。

個人的に嬉しかったのが、香寿たつきさんの歌をたっぷり堪能できたことでした。昔から香寿たつきさんが好きでしたが、こんなに香寿さんの歌声を堪能できる作品もそうないような?

気付いたら途中からオペラグラスはほぼ香寿さんを追っていました😊

CROSS ROADのストーリー

ジェノヴァの貧しい家に生まれたニコロ・パガニーニ。父は賭博が大好きで母は優しい歌手。

パガニーニも幼少からヴァイオリンを弾くが、「自分は天才ではない」と気付けるくらいには才能があり、それゆえ葛藤する。

悩めるパガニーニは、ある日、街外れの十字路で悪魔アムドゥスキアスに出会ってしまう。

そこでパガニーニは悪魔と血の契約を結ぶ。100万曲の名曲の演奏と引き換えにしたのは、パガニーニの命だった。

人を魅了する演奏で瞬く間に成功を収めるパガニーニ。

しかし、演奏会のたび、アンコールに応えるたびに、彼の命は削られていく

 

「パガニーニが悪魔と契約した」という伝説は、パガニーニ本人が生きていたことから有名で、当時の人は本気でパガニーニが悪魔だと信じていたみたいだし、パガニーニ自身も自分の売り込みにそれを利用し、わざと黒い服装で演奏会に登場していたようです。

最初CROSS ROADのあらすじで「パガニーニが悪魔に出会って血の契約する」と読んだとき、面白そうだけれど、結末もまぁまぁ予測できるし特に目新しいとは思いませんでした。

例えば現代の天才ヴァイオリニスト、デビッド・ギャレットがパガニーニを演じた映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」も、悪魔との契約になぞらえたようなシーンが登場するし、パガニーニを題材にするなら悪魔登場は必須というか。

でもCROSS ROADのストーリーが進むにつれ、単純に悪魔との契約を結んでしまった孤独な演奏家の話ではなく、

人は誰でも一生に一度は四つ角で悪魔に会って、時に悪魔の力に魅入られてしまう弱さが人間にはあるけれど、その弱さを抱擁する愛の深さを持つのも人間・・・このような話だと私は受け取りました。

 

この作品で、パガニーニが悪魔と契約するきっかけは、母親の深い愛情も関係していると思います。

本当は天才じゃないのに、お金もうけのために「息子さんは才能がありますよ」と信じさせた教師のせいで、息子のために自分の身を削ってまでレッスン代を捻出しようとする母親。

親の期待に応えられないパガニーニの葛藤が悪魔を呼び寄せた。

こう書くと、親の過度な期待が息子の不幸を招いたようにも思えるのだけど、この作品はもっと大きな愛というか、お母さんは別に息子に一流のヴァイオリニストになって欲しかったのではなく、息子と息子の音楽を愛し、息子がそれで幸せになれるなら、とただひたすら愛情を注ぎ、息子のパガニーニもそれを知っていたから、母親も息子も自分の魂で生きられたような気がします。

 

パガニーニに対する周りの愛が深くて、最後まで愛情をそそぐ母親、見守る執事、ジプシーの娘アーシャは、パガニーニが悪魔と取引をしたと知っても、パガニーニに対する気もちは一ミリも減らない。

そしてパガニーニも、自分と同じ過ちを犯さないようアーシャや作曲家のベルリオーズを救う。

悪魔に支配されているようでも、最後は自分の意志を貫いた人間の強さみたいなものを感じました。

キャスト感想

ニコロ・パガニーニ:相葉裕樹
アムドゥスキアス:中川晃教
アーシャ:早川聖来(乃木坂46)
エリザ・ボナパルト:青野紗穂
コスタ、ベルリオーズ:畠中 洋
アルマンド:山寺宏一
テレーザ:香寿たつき

ニコロ・パガニーニ:相葉裕樹

相葉さんは、感染症により初日以降休演されていて、この日が初日。

悪魔に翻弄されながらも、強く抗おうとする姿が印象的でした。良い意味でパガニーニのエゴが感じられます。

周りから悪魔と見られようが教会から嫌われようが気にしないけれど、たいせつな家族は守りたいし、母親には深い愛情を抱いている。恋人のエリザの前では、パトロンというのもあるからか、取り繕っているようにもみえ、アーシャには素で接しているようにもみえる。

でも一番素で接しているのは、執事のアルマンドかな。ずいぶん我が儘をいうけれど、これは気を許した甘えというのがわかる。

相葉さんは立ち姿がとても美しいですね。レミゼでアンジョルラスを演じている時と少し重なりました。力強いパガニーニなのだけど、ふと消えるような危うさもあって、パガニーニのラストがとてもしっくりきました。

アムドゥスキアス:中川晃教

アムドゥスキアスはソロモン72柱の悪魔。音楽の才能を与える力を持つ悪魔で、音楽の申し子のようなあっきーが演じるのにぴったりです。

アムドゥスキアスは高音で歌う曲が多かったのですが、楽器が奏でるメロディ―とあっきーの声が素晴らしく調和していて、劇場の空気があっきーの歌声に包まれているようでした。

あっきーが登場したとき、悪魔のコスプレをしたあっきーだ!と思いました(笑)

「パガニーニの音楽は全て自分のものだよっ」て我が儘を言う、可愛い小悪魔みたい。

でも後半にすすむにつれ、このセリフがだんだん怖くなってきました。言っていることは何一つ変わらないのに、後半は人の形をした悪魔にみえてきました。

アーシャ:早川聖来

パガニーニのファンで何かとパガニーニの前に出没するジプシーの娘。

最初アーシャの存在意義がわからなかったのだけど、後半、悪魔と契約してしまったパガニーニの苦悩に気付き、ありのままのパガニーニを受け止める姿をみて、人間が持つ信じる心の強さや美しさに心を打たれました。

ラスト近くの強く真っ直ぐな瞳が印象的です。歌はもうちょっと頑張って欲しいかな。

エリザ・ボナパルト:青野紗穂

青野さんのエリザ、一人の女性の寂しさや葛藤がひしひしと伝わってきてすごく良かったです。

皇帝ナポレオンの妹であるがゆえ、まわりからの称賛や嘘に辟易していたが、真実を告げるパガニーニに惹かれるエリザ。登場した時はめちゃくちゃ気位の高い高貴な女性にしか見えないのに、パガニーニを愛した途端、少女のようにひたむきで可愛い。

でも、自分の心のよりどころの全てがパガニーニになってしまったエリザは脆くて、悪魔と契約してしまう。

コンサートで成功するたび、エリザの花束は花が増えて大きくなっていくのが怖い。花が増える=パガニーニの命が削られていくってことですからね。

パガニーニのためと思い、コンサートが成功するよう尽力を尽くしてきたエリザだけれど、それが彼を追い詰めていたと知ってパガニーニを手放すエリザ。

すごく深い愛情を抱いているのに、パガニーニがエリザを本当に愛していたのかは...うーん。悲しい。

アルマンド:山寺宏一

相葉さんパガニーニと気心知れた仲、という感じでとても良いコンビでした。

なんだかんだと言い合いながらも、帰宅の遅いパガニーニを毎晩待ち、悪魔と取引をしたパガニーニの心を「怖かったでしょう」と案じる。

パガニーニの全てを受け止め、パガニーニもアルマンドを失いたくないと願う。ラストのアルマンドの歌、彼の思いが溢れていてぐっときました。

テレーザ(パガニーニの母):香寿たつき

冒頭にも書いたけれど、この作品は香寿さんが本当に素晴らしい!香寿さんの歌だけでもチケット代の元がとれるくらい。

香寿さん、どの作品でもめちゃくちゃ上手だけれど、出演シーンが少ない作品も多いし、いつももっと歌が聞きたい~と思っていたので、こんなに歌ってくれるミュージカル作ってくれてありがとう・・・と言いたい気分です。

お母さんが、すごく優しくて息子へに誇りを持っていて、後半、悪魔のあっきーとお母さんが劇場で隣に並んだ時に、この時のあっきー悪魔はいじわるなんだけれど、お母さんが優しいままで強い。

この作品では聖母的に描かれていて、史実の印象とは違う(史実では、神秘主義的な母親ではあったらしい)けれど、結末を考えると、この母親像がしっくりきます。

この日、満員御礼が出ていました。
カーテンコールで、やっと初日を迎えられた相葉さんを指し、「ようやく最後の1ヒースが揃った」と言ったあっきー。無事に皆さんで千秋楽を迎えられますように。


悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト―パガニーニ伝―(新潮新書)


パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト(字幕版)

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