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ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』感想@東京建物 Brillia2021年10月

池袋の東京建物 Brilliaホールで上演されているミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』を観劇してきました。

ブリリアの悪評ばかり聞いていたので(見えない、聴こえない、狭い)、ブリリアで上演される演目はなるべく避けたいと思っていましたが、モーツァルト作品ということで見ておくべしと事前にチケット確保していたのが別の日の一枚。

たまたま比較的評判の良い2階席2列目センター近くの座席が確保できたので、チケット追加しました。

特に問題ないと聞いていた今回の席は、噂通りで視界良好、音も問題なし。普通に良かったです。

追記:後日、1F後方席(R列)センターに座りましたが、この席も視界も音響も問題ありませんでした。

目次

ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』あらすじ

天才ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトがもし女性だったら?

大胆な着想を元に描かれた福山庸冶氏の漫画「マドモアゼル・モーツァルト」が原作の舞台。


[まとめ買い] マドモアゼル・モーツァルト

幼少期の娘エリーザの演奏に天賦の才能を見出した父レオポルトは、「どんなに才能があっても女性では活躍できないから」と、娘エリーザを息子として育てることを決意。

エリーザは、男性の名前ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトと名乗り、宮廷でもてはやされるようになる。

頭に次から次へと浮かぶ音楽(精霊)。モーツァルトは、時代の寵児となり女性からも人気だ。

 
下宿先の娘コンスタンツェはモーツァルトを男性と信じ彼に夢中。

当時すでに高い評価を得ていた宮廷作曲家のサリエリは、モーツァルトの音楽に否定的でありながら、”男性的ではない”モーツァルトが気になって仕方ない。

サリエリは愛人のカテリーナ・カヴァリエリに、「モーツァルトを誘ってみろ。彼は女に興味がないはず。」とまで言う。

しかしモーツァルトは、コンスタンツェと結婚する。

コンスタンツェのモーツァルトへの強い気持ちに加え、コンスタンツェの母ウェーバー夫人に押し切られたような形だ。

モーツァルトの結婚の話を聞き、驚く父レオポルトと姉ナンネール。

結婚初夜を迎えるが、コンスタンツェがベッドに誘ってもモーツァルトはやってこない。

モーツァルトを誘うコンスタンツェがいじらしい。

結婚後何日たっても「仕事があるから」「ウィーンの街に繰り出そう」と同じベッドで寝ることを拒否するモーツァルトについにコンスタンツェが怒り、やむなくモーツァルトは自分の胸を見せる。

「私は女の人と結婚しちゃったの?」とショックを受けるコンスタンツェ。

家を出ていくが、まわりにどう説明してよいかわからず、結局モーツァルトの元に戻る。

悩むコンスタンツェはモーツァルトに寄り添うが、弟子のフランツと惹かれあい子供をもうける。
 

時代の寵児だったモーツァルトだが、彼の音楽は飽きられ演奏会に人が集まらなくなった。

ある日、父レオポルトが亡くなったと知らせがくる。

モーツァルトは突然、「モーツァルトの持ち主がいなくなった」「もう自由だ」「解放された」と、女性のドレスを身にまとう。

エリーザの姿になったモーツァルトをみて混乱するコンスタンツェ。

モーツァルトは女性の姿でサリエリの演奏会に行き、サリエリはエリーザに一目ぼれする。

ふわふわした高揚感に包まれるモーツァルトだが、モーツァルトに振り回され葛藤するコンスタンツェの思いを知り、自分自身を振り返る。

サリエリの家では、愛人カテリーナがサリエリに問う。「男性は自分より才能のある女性を愛することが出来るの?」

サリエリの答えは「尊敬はできる。だが愛することはできない(確かこんなセリフ)」

 

モーツァルト(エリーザ)がサリエリ邸に出向き、彼の作曲した音楽をプレゼントされる。

しかしモーツァルト(エリーザ)は、「もっとこうしたら良い」と自分の思うままプレゼントされた曲にどんどんアレンジを加えていく。サリエリは「なぜ譜面通り弾かないんだ!」と激しい苛立ちをみせた。

サリエリから去るモーツァルト(エリーザ)。

 
「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」の台本を書いたダ・ポンテがロンドンへ行ってしまう。落ち込むモーツァルトの元ににやってきたのが劇場支配人、台本作家、そして俳優のシカネーダー。

貴族のためでなく大衆のためのオペラを作ろうとモーツァルトに持ちかける。

大衆に迎合し低俗なものは作りたくないと躊躇するモーツァルトだが、モーツァルトなら低俗にならない大衆向けのオペラを作れるだろうとシカネーダーは説得。

2人でオペラ「魔笛」にとりかかる。

取りつかれたように心身を削りながら「魔笛」を作曲するモーツァルト。モーツァルトを支えるコンスタンツェ。

「魔笛」完成後、モーツァルトは言う。「コンスタンツェ、君がいなければモーツァルトはいなかった」

感想

メタバレがあります。

作品について

モーツァルトの三大オペラ「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」を場面転換に使い、ミュージカルとはいえ、この3つのオペラを知っている方が何倍も楽しめそうな作品と思いました。

知らなくても問題はないと思うけれど、例えば舞台に現れる精霊は、この三大オペラの登場人物たちで、知ってみるのと知らないでみるのでは印象がだいぶ違うと思う。

モーツァルトとコンスタンツェとの結婚式のシーンでは、「フィガロの結婚」が使われ、ドタバタ喜劇のこのオペラと「マドモアゼル・モーツァルト」のモーツァルトとコンスタンツェの初夜の攻防が面白くリンクしています。

コンスタンツェとフランツの不貞、モーツァルトやレオポルトの嘘が問われるシーンでは、無神論者のドンジョヴァンニに天罰が下る場面が効果的に使われています。オペラ「ドン・ジョヴァンニ」では地獄の業火に焼かれるシーンが有名ですが、「マドモアゼル・モーツァルト」で焼かれるのは父レオポルト。

レオポルトの登場回数は少ないけれど、このシーンをみるとモーツァルトを男として育てた父が最も罪が重いとなるのかな。

モーツァルトは男性として生き、父が亡くなったことで女性の姿に戻りますが、サリエリに拒絶され、再び音楽に向かったモーツァルトが作るのが「魔笛」。貴族向けに作っていたモーツァルトが大衆向けに作った作品で、モーツァルトの内面の変化を感じさせます。

三大オペラ以外にも、モーツァルトの有名作品(トルコ行進曲、アイネクライネナハトムジークなど)もふんだんに使われ、これを機にモーツァルト作品を聞くのもいいし、もしこれから観劇される方がいれば、三大オペラをさらっとでも動画でみてみるとより楽しめそうな気がしました。

キャストさんについて

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/エリーザ :明日海りお
サリエリ:平方元基
コンスタンツェ・モーツァルト:華優希
エマヌエル・シカネーダー:古屋敬多(Lead)
レオポルト・モーツァルト:戸井勝海
カテリーナ・カヴァリエリ:石田ニコル
フランツ・クサーヴァー・ジュスマイヤー:鈴木勝吾

大久保芽依、鍛治直人、加藤さや香、草場有輝、島田連矢、武田晶穂、徳垣友子、中嶋紗希、永松 樹、西尾真由子、練子隼人、松田未莉亜、吉田萌美、渡辺謙典

特に素晴らしいと思ったのがキャストさんたち。温度感がいいといったら良いのか、それぞれの関係性がすれ違いがありながらも暖かく感じました。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/エリーザの明日海りおさん

男のヴォルフガング女のエリーザといった演じ分けではなく、明日海りおさんの内面から自然にヴォルフガングやエリーザが出てくるようでした。

透明感があって、いい意味で非現実的な存在感が、神の子モーツァルトらしい。

天才で無邪気なゆえに周囲を振り回してしまうが、怒られれば子供のようにしょんぼりして憎めない。

明るい衣装を身に着けているのもありますが、何よりご本人の内面から出るきらきら感が、子供の心をもったモーツァルトそのもののようでした。

非現実的な存在感を醸し出す明日海りおさんに対し、こちらも良い意味で生々しさを感じたのが、平方元基さん演じるサリエリ
モーツァルトに対する嫉妬や欲望を、抑えようとしつつ抑えられず自分自身に苛立ちを覚える演技が素晴らしいかったです。

今年は平方さんの作品3作目で、メリリー・ウィー・ロール・アロングのフランク役では「人の弱さ」、王家の紋章イズミルでは「静かな炎」と、作品と登場人物ごとに違う魅力を伝えてくれ、本当に素晴らしい役者さんだなと思います。歌も上手。

コンスタンツェ華優希さん

今回、明日海りおさんのモーツァルトとコンスタンツェの華優希さんの関係がとても素敵でした。

モーツァルトを男性と信じているときは、モーツァルトを誘うために足を出したり、とてもかわいくいじらしくて。

モーツァルトに好意を持っている姿をコミカルに演じているのですが、空振りしているのが漫画ちっくでこの舞台にすごくあっています。

モーツァルトが女性だとわかってからはショックを受け、モーツァルトの弟子のフランツと恋仲になっちゃうんですけれど、モーツァルトの事も気になって、なんだかんだと一緒にいるんですよね。まるで同志のように。

この2人のモーツァルトとコンスタンツェをみていると、人生に置けるパートナーって、恋人や夫婦である必要もなくて、相手が必要な時に側にいてあげることだとか、理解できなくても寄り添ってあげることだとか、色々な形があるんだなと改めて考えさせられます。

最後にモーツァルトが確か「君がいなければモーツァルトはいなかった」とコンスタンツェに言うのですが、これって最高の愛の言葉じゃないですか?

天賦の才能を持つ女の子モーツァルト、その才能を世に出すためモーツァルトを男にした父レオポルト。

しかしモーツァルトがモーツァルトとして最期まで生きていけたのは、女でも男でも自分を受けとめてくれたコンスタンツェがいたから。

そんな風に思えました。

2人はもしかしたら宝塚時代にコンビを組んでいたから、より関係が濃く感じられたのかな?

エマヌエル・シカネーダー古屋敬多さん

フランスでは革命が起こり、貴族から大衆へーーシカネーダーはモーツァルトに魔笛の作曲をもちかける。

古屋敬多さんは登場シーンから熱い!前向きなエネルギーに満ちた時代を反映する激しい音楽とダンスと伴に、観劇しているこちらも一気に時代が一歩先にすすんだ気になりました。

すごく可愛かったのが、「魔笛」の古屋敬多さんパパゲーノと明日海りおさんパパゲーナのアリア「パ・パ・パ」。

登場シーンとギャップがありすぎましたw

あと、シカネーダーが、モーツァルトが実は女性だと気付くシーン。

「一体君は誰なんだ?」といいつつ、モーツァルトに口をふさがれるとそれ以上追求せず、そのままのモーツァルトを受けいれる姿が素敵です。

「マドモアゼル・モーツァルト」のシカネーダーは原作でも登場シーンが遅く、深く掘り下げられていないので演じるのが難しいのでは、と思っていましたが、短い時間で、強烈な存在感を放っていました。

カテリーナ・カヴァリエリ石田ニコルさん

華やかで誇り高くとても素敵な女性。サリエリの気持ちがエリーザに移ってしまった時の切なさと憂いを帯びた表情が印象的。サリエリは、モーツァルト(エリーザ)に惹かれたとはいえ、カテリーナを捨ててしまうのはもったいなくないか?(笑)

本当に素敵でした。また別の舞台みてみたいな。

他に、コンスタンツェと不倫の関係になってしまうがモーツァルトを尊敬し誠実さを失わない鈴木勝吾さん。

出番は少ないながら、モーツァルトをある意味支配し続ける父レオポルト戸井勝海さん。

モーツァルトという存在が周りを巻き込むのか、モーツァルト自身も自らの才能に翻弄されるのか

ドラマチックな人生を、最後は暖かい気持ちで見終えられるのは、キャストさんたちの創り出すモーツァルトとの関係性なのではないか、と思えた作品でした。

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