ミュージカル『モーツァルト!』感想2021年帝国劇場

2021年ミュージカル『モーツァルト!』いってきました。

4/8東京開幕~5/6東京千秋楽の予定が、まさかの緊急事態宣言発令で4/27が千秋楽に😭 

ヴォルフガングの山崎さんと古川さんは昨年の今頃トート役で出演予定のエリザベートが全公演中心になったんですよね。M!は最後まで駆け抜けて欲しかったなぁ….

アニーのように初日が千秋楽になってしまった作品、すでに来日しラミン・カリムルーとハドリー・フレイザーが出演予定のミュージカル・ミーツ・シンフォニー 2021中止など、M!以外にも多くの人が悔しい想いをしているんだろうな。

もう一体なんなんだろう。

今回の事態は完全に政治の失策じゃないか…

2度目の緊急事態宣言が聖歌リレー開始直前に終了し、再び感染増加傾向になり3度目の宣言。

そして感染拡大を防ぐ為と国内の経済活動を止めながら、なぜいまだにオリンピック強行しようとしているのか。

3度目の終了予定が、IOCバッハ会長の来日(5/17~18)一週間前なのはなぜなのか。

ワクチン接種率が他国に比べ極端に低く医師不足が叫ばれる中、オリンピックに看護師や医師を派遣せよとのお達し。

この一年、日本の政治家が国民に向いていない事をつくづく思い知らされました。

私はオリンピックを楽しみにしていた人間だけど、さすがに今回の宣言でオリンピックを歓迎する気持ちは失せました。

他国の選手も関係者も感染拡大中の日本に来たくないと思うのだけど、日本政府は自分からオリンピックやらないと言えなくて、他国のボイコット待ちなのかしら。

劇場もだけど、飲食店やデパート、映画館などどこもみんな頑張ってきたんだよな~。

感染抑えるためにやむを得ずの宣言、というならわかるのだけど、だったらオリンピック開催だって無理なのに。

ミュージカル『モーツァルト!』感想

今回、私はチケットを購入していた3回分全て観劇できました。(それも素直に喜べる状況ではないのですが)

1回はナビザの抽選で買えました。5月に始まるレミゼのナビザ抽選も当選。M!やレミゼのような人気公演はここ数年ナビザで購入できなかった事を考えると、今は以前に比べチケット購入できる状況にない人が増えているんでしょうね。

2018年から3年ぶりのM!実力キャスト揃いで「成熟したカンパニー」といった印象でした。2018年に新演出となり、2021年は更なる変更が加えられ、私は2018年と比べて分かりやすかったです。

ヴォルフガング:古川雄大さん

今期最初にみたのは古川雄大さん。

ほんとびっくりした。3年前とは歌が違う。別人みたい。

古川さんは魅力的な俳優さんだけど、声が細いと思っていました。その部分がヴォルフガングの痛々しさともあいまって3年前は古川さん独自のヴォルフガングの魅力を作っていたと思うのだけど、2021年は細かった歌声が豊かに響き、深みや艶まで出ていて。この名曲揃いの作品で、素晴らしい歌声を響かせてくれて涙がでました。

相当努力なされたのではないでしょうか。

古川さんも歌に自信が出来たのか、3年前の初演と比べるとだいぶ余裕を持って歌い演技もされていたように感じます。

古川さんは相当な美貌の持ち主で、エリザベートのトートを演じると、禍々しい美しさを醸し出す独特の雰囲気があるのですが、ヴォルフガングを演じる時の「普通っぽさ」もすごく魅力。

父レオポルトの言うような、靴の紐も結べない、本当に全く何もできない青年にみえる。

その無防備さや無邪気さがモーツァルトっぽくて好きです。家族にいじめられているコンスタンツェを自分が守るっていっているけど、どうみても守れるような男性には見えない(笑)

古川さんは、私には完全に才能(アマデ)の器にしか見えなくて、最後のレクイエムを書くときも、本人は自分には出来るって無邪気に思っているけど、だんだん書けないと焦りが出てきて追い詰められいく様子は鬼気迫っていく。

そういえば2018年の古川さんの感想に、アマデと距離のあるヴォルフガングに見えたと書いていました。今回は距離があるというより、完全に別の存在(才能と器)に見えた気がします。

ヴォルフガング:山崎育三郎さん

対して山崎育三郎さんは、私には才能(アマデ)もヴォルフガングの一部にみえます。

2021年の山崎さんはヴォルフガングの高みに昇りつめたといっていいのではないでしょうか。

山崎さんの身体から発せられる豊かな響き。1人で歌っているのに複数の音が重ね合わさったハーモニーのようにも聞こえ、劇場でこの歌声を全身に浴びれる幸せをひたひたと味わっていました。

そして演技がたまらなく良かったです。特に父レオポルトとウィーンで口論し、その後に歌う「何故愛せないの?」

こんなに孤独で寂しいヴォルフガングは日本で初めてみたかも。

和訳もあって、この曲は父親に見捨てられた息子というだけでなく、息子が父から独り立ちする曲にも聴こえる時があるのですが、今回の山崎さんヴォルフガングに関していえば、父の愛を得られなかった寂しい息子の想いが詰まりまくっていたと思う。

DVD収録版みても思ったけど、山崎さんヴォルフガングは甘えっ子な気がします。

父親から愛されているって絶対の自信があるのに、父が愛しているのはかつての幼い自分だったんだって、この場面ではっきり分かっちゃう。

青年ヴォルフガングが子供に帰って子供のまま泣いているような。そんな姿が心に残りました。

 

レオポルト:市村 正親さん

お父さん(レオポルト)の市村 正親さん。初演からずっと出てこられて、勝手ながら年齢考えて大丈夫なのかな?なんて心配しちゃったりしていましたが、お声艶々で相変わらず素晴らしいレオポルトでした。

3回め観た時は作品冒頭の出だしが、半拍子くらい早く入ってしまって曲と歌がずれてしまったけどw それ以外はさすがでした。

去年韓国のM!を配信で観た時、父親像がかなり衝撃で、機能不全家族の話か?と感想を書いていました。

韓国版モーツァルト感想※パク・ウンテ、キム・ジュンス、パク・ガンヒョンさん出演

ウィーンも韓国も日本も、ヴォルフガングに干渉するレオポルトというのは一緒なのだけど、日本の場合・・・というか市村さんの場合、割と良識のある父親像な気がします。

ヴォルフガングがウィーンの演奏で皇帝にブラボーといわれた時、ヴァルトシュテッテン男爵夫人に「満足はできません」とかぶつぶつ言いながらも、演奏の終わったヴォルフガングを笑顔で迎え抱きしめようとする。(市村さんが初演からシングルキャストなので、他の方が演じたらもしかしたら今後違ってくるかもしれないけど。)

この後、父と息子が決裂してしまうのは、ヴォルフガングが「コロレドの元を離れてよかった。家を出てよかった」と、しゃーしゃーと言葉にしてしまうからで、日本版の場合レオポルトはヴォルフガングのそういう傲慢なところに我慢できず怒り出す、という流れ。

でも韓国版では、ヴォルフガングが演奏している時、すでにレオポルトは恍惚とした表情を浮かべ指揮をする手振りをします。息子の音楽に酔っているのではないことは、その後のヴォルフガングを責める言葉でわかるので、そう考えるとレオポルトの表情や仕草は、ヴォルフガングの才能や名声は自分のものと考えているようにみえました。

どちらも面白く、韓国版を観た時は興奮しすぎて眠れないほどでしたが、今再び日本公演を観劇してみると、市村さんの演じるレオポルトの愛情と不安、そしてエゴが入り混じったさじ加減がとても好きだなぁと思います。

ナンネール:和音美桜さん

この作品の最大の犠牲者はナンネールだよなぁ…と思います。弟の影に隠れてしまった才能ある姉。

和音美桜さんは歌が上手なのは相変わらずで、少し勝気に見える所が好き。結婚相手からお金のことで嫌味をいわれたとき「ご自分で用意してください」ってけんもほろろに返すところが小気味良いです。

和音さんナンネールは勝気に見える分、才気煥発な女性にもみえて「終わりのない音楽」でもあるように、ナンネールが男だったら本当に人生変わったんだろうなと思います。

時代や父親の家族への幻想の犠牲者と思うのだけど、父親の気持ちを大切にしすぎて、父親を恨むのではなく弟を責めてしまうのは観ていて辛いものがありました。

私自身の経験ですが、親の機嫌を損ねるのが怖くて下の兄弟に強く言いすぎてしまう事があり、親は意図せずとも私自身、今でも精神的に支配を受けてしまっているような所がナンネールと重なります。ヴォルフガングは家族から離れたことで自由になったけど、ナンネールはずっと支配を受けたままなんですよね。。それも本人はそう意識せず。

ヴォルフガングが去った後のレオポルトとナンネールは完全に「影」の存在。ヴォルフガングが光かというと、アマデもいるから単純にそうとは言えないと思いますが、レオポルトとナンネールからしてみたら「見捨てられた」感が強く、自分たちを影と認識しているような演出がとても好きです。

コンスタンツェ:木下晴香さん

2018年は3人のコンスがいて木下さんだけが観られなかったので、ようやく観れた!と嬉しかったです。めちゃくちゃ上手。「ダンスはやめられない」はPVか何かみているみたいで、この1曲で一つのドラマみたいでした。

特にコンスタンツェの「空虚さ」が今までにないほど感じられたかな。

私の好みの話ですが、欲を言えばヴォルフガングが恋に落ちた時の「可愛らしいコンスタンツェ」をもっと感じたかったです。

木下晴香さんは十分に可愛らしい方ですが、女性が好きで楽しい事が好きなモーツァルトが、コンスに恋に落ちた理由が「あるがままの自分を認めてくれた」だけではないと思うんですよね。

とはいえ、全体的に歌も演技もとても上手で見ごたえのあるコンスタンツェです。

ヴァルトシュテッテン男爵夫人:香寿たつきさん

個人的に一番楽しみにしていたのが、香寿たつきさんヴァルトシュテッテン男爵夫人の「星から降る金」。

壮大な宇宙空間を思わせるこの曲を、今年も香寿さんの美しい艶やかな歌声で堪能できた幸せ。

DVDで何度もみているけど、やっぱり劇場で聴くと迫力が違いますね。

「星金」はヴォルフガングにとっては狭い世界(家族、ザルツブルク)を出て才能を生かしに世界へと導く、希望を見せる曲にも聴こえますが、「愛することとは手放すこと」と父レオポルトにはとても残酷な歌。

結果的に家族を引き離すので、もしかしたらヴォルフガングにも残酷な歌だったかもしれない。

曲に合わせてアマデの顔が遠くを見つめ、何かスイッチが入ったのが今回の公演で気付くことができました。

韓国はこの曲で「才能が授けられたものは、それを全うする事が運命」と伝えていて、日本の歌詞ではそこまで直接的に言っていないのだけど、才能(アマデ)がこの曲に刺激されるというのが今回よくわかって。

そしてなぜか、香寿たつきさんのヴァルトシュテッテン男爵夫人の時は、アマデを従えているようにも見えました。

ヴァルトシュテッテン男爵夫人:涼風真世さん

星空のごとき煌めく男爵夫人なのが涼風真世さん。他の公演でも度々思うのですが、涼風真世さん自身が発光しているというか、これがオーラというものなのでしょうか。

涼風真世さんの星金も大好きで、歌というより物語。王様のセリフのところは、声色を変えて王様の声で歌う。

この壮大なナンバーをいくらでも気持ちよく歌いあげる事が出来るはずなのに、あくまでお芝居をしながら物語を紡いでいくんですよね。

韓国版の星金も歌が素晴らしくパワーありましたが、この曲に関しては、日本版の繊細なお芝居付きの星金が好みかな。

コロレド大司教:山口祐一郎さん

市村さん同様、初演からずっと演じられていて、年々若返ってらっしゃる。

お声艶々、劇場がゆらぐほどの圧倒的な歌声、そして美貌と相変わらず唯一無二の存在、と言える大司教様でした。

再演出で追加になったラスト近くのヴォルフガングとのデュエット「破滅への道」。2018年では格好いい曲と思いながらも、唐突感を感じる流れだったのですが、今回は前回よりわかりやすかったです。

今回の流れで、私自身もコロレドの心情が腑に落ちた部分がありました。

アルコ伯爵とウィーンへ向かう馬車で(旧演出ではおトイレシーンがあったところ)、「神が私に委ねたもの」を、威張り散らしながら歌うコロレド大司教は、自分はカトリック最高位の聖職者なのだから、神の代弁者としてその権利を使うべく、高い所からヴォルフガングを見下ろし、彼の才能を使おうとしている。

でも、ヴォルフガングが神の摂理も及ばぬ次元へと進化をとげ(「神よ、何故」)、ヴォルフガングが自分より高い所に位置したと悟った。

旧演出では謎解きゲームとラスト残して実質コロレドの登場はなくなるのだけど、

新演出では「破滅への道」が加わった事で、コロレドは、神の代理である自分の使命はモーツァルトの才能を生かすことと言わんばかりにヴォルフガングを諭す。ここでの第一声が「神の祝福を授けられし者」と言い切るのが、完全にヴォルフガングをなんとかしなきゃ、と思っているように感じました。

まぁ決裂しちゃうんですけれど。

2021年、両ヴォルフガングが素晴らしいこともあって、ヴォルフガングxコロレド大司教デュエットは本当に見ごたえありました。

 

緊急事態宣言で千秋楽が早まり、ラスト1日残した26日の公演。ラスト「影を逃れて(フィナーレ)」で目をつぶって歌っている山口さんの姿が目に入りました。

こういう時、普段の山口さんなら視線を客席に、それも1階も2階もまんべんなく向ける印象があったのですが、この日は、今のこの大合唱の瞬間をご自身の耳に残そうとしているかのようにも見えました

まだ札幌や大阪が中止になったわけではないけど、公演中止の可能性もあるし、次のモーツァルト!がいつ公演されるのか、そしてその時に再び山口さんがコロレドとして登場するのか、誰もわからない。そんな中のこの表情。

このような姿をみたのは初めてで、なんだか泣けてきました。

アルコ伯爵:阿部 裕さん

アルコ伯爵は武岡淳一さんからチェンジ。コバンザメっぽい武岡さんのアルコ伯爵も良かったですが、阿部さんアルコ伯爵は、貫禄あるお姿と低音太い声で悪代官みたいで面白かったw

今回、山口さんのコロレドのアイラインがかなりくっきり黒く入れているのもあって、阿部さんアルコ伯爵とコロレド大司教2人が、わかりやすいヒール役っぽくもみえました。

山口さんのコロレドと息ぴったりなのは、お二人の付き合いが長いからかな?(笑)

セシリア・ウェーバー:阿知波悟美さん

阿知波さんも初演からずっとセシリア。超個性的なウェーバー家の元締め的な存在に見えます。いつみても安定感があって大好きです。

シカネーダー:遠山裕介さん

シカネーダーというと吉野圭吾さんの記憶が鮮烈ですが、個人的に吉野さんのイメージが「妖」だとしたら、遠山裕介さんのシカネーダーは「陽」のイメージ。

昨年から何公演も中止に追い込まれた状況下の中だからか、遠山裕介さんのシカネーダーの「陽」の雰囲気に今年の私は救われたというか、明るく軽やかで、もちろんご本人は色々な思いがあると思いますが、演劇を作る側のシカネーダーを楽しく演じてくれて私は嬉しかったです。

再演出になって大きなピアノが舞台にでーんと鎮座し、段差が大きい鍵盤に見立てた階段を、息を全く乱さず軽やかに歌いながら駆け上る「チョッピリ・オツムに、チョッピリ・ハートに」はさすがでした。

アマデ:設楽乃愛さん、深町ようこさん

アマデは他に鶴岡蘭楠さんもいましたが、私が観られたのは2人でした。

設楽乃愛さんアマデ、目に力があります。基本無表情なのに、ヴァルトシュテッテン男爵夫人が星金を歌ったとき、目がきらきらして、あぁ、アマデには煌めく音楽の美しい世界が見えたんだなと思えました。シカネーダーが魔笛の台本を渡すときも目がきらきらして、ここから大傑作「魔笛」が作曲される流れがすとんと理解できます。

深町ようこさんアマデ。抑え気味ながら表情と目の動きで場面を支配するように見えます。1幕ラスト「影を逃れて」でインクが出なくなったペンで曲を書けなくなった時の、唖然としたなんともいえない表情(失望?空虚?)が素晴らしいです。

アマデちゃんたち圧巻の演技なのに、カテコで可愛らしい声で「ありがとうございました」なんて言われると、ギャップに恋に落ちそうですw

 

その他、2018年の時は気付かなかったけど、新演出の舞台を囲む枠が五線譜で出来ていることに気づきました。「ここはウィーン」でのシャンデリアは、五線譜に音符が書かれているものですごく素敵!

あと、こういう状況下だからかと思いますが、帝劇正面の普段ならキャスト扮装写真が載る場所は全て空白、劇場内も垂れ幕などの装飾なし、そして「会話禁止」と掲げられていました。

東京千秋楽では、小池先生がなんらかの形で残したい・・・発言があったそうで、もしかしたら要望出せば映像化してくれるかもしれない….ということで、要望出しました↓

両ヴォルフバージョン。DVD(本当はBRだけど)欲しいです!!

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2021年「モーツァルト!」キャスト

ヴォルフガング:山崎育三郎、古川雄大
レオポルト:市村正親
コンスタンツェ:木下晴香
ナンネール:和音美桜
ヴァルトシュテッテン男爵夫人:涼風真世、香寿たつき
コロレド大司教:山口祐一郎
セシリア・ウェーバー:阿知波悟
エマヌエル・シカネーダー:遠山裕介
アントン・メスマー:松井 工
アマデ:設楽乃愛、鶴岡蘭楠、深町ようこ

安部誠司、奥山 寛、後藤晋彦、白石拓也、武内 耕、田中秀哉、田村雄一、福永悠二、港 幸樹、山名孝幸、脇 卓史、渡辺崇人
彩花まり、池谷祐子、樺島麻美、久信田敦子、彩月つくし、原 広実、松田未莉亜、水野貴以、柳本奈都子、吉田彩美

指揮:甲斐正人/宇賀神典子

観劇記録
4/14マチネ(古川、香寿、設楽乃愛)
4/21ソワレ(古川、涼風、深町ようこ)
4/26ソワレ(山崎、香寿、深町ようこ)