ミュージカル『NINE』感想(2020年赤坂ACTシアター)9歳のグイドの視点でみる作品?

城田優さん主演のミュージカル『NINE』を観てきました。

かなり前に映画『NINE』は見ていて、ストーリーはピンとこないけれど、音楽が良いし女性陣がゴージャスで舞台も楽しそう・・・と思ってたら、最大の見せ場と思っていた「シネマ・イタリアーノ」が演出の都合上ナシになったとかでショック。

シネマ・イタリア―ノは映画「NINE」の予告編に流れるこの曲↓

シネマ・イタリア―ノ無しでは楽しさ半減・・・

あと映画では、献身的だったグイドの妻ルイザが後半、○○時(ネタバレなので臥せます)に歌う「Take It All」が恰好よくて好きだったけれど、これはミュージカル版にはないんだなぁ。。。

ただ、この2つが無かったとはいえ、やっぱり音楽は素敵でした。

いろいろとモヤモヤもあるので、良かった点、イマイチだった点などを感想にして書きます。

ミュージカルNINEあらすじ

チャプリン以来の天才と言われ名声を欲しいままにしてきた映画監督のグイド・コンティーニ。常に華やかな女性たちに囲まれ、繰り返されるスキャンダルも次回作へのインスピレーションとなっていた。しかし最近は映画製作に行き詰まりを感じている。

元女優の妻からは離婚を切り出され、グイドは妻との関係修復とスランプ打開のためスパを訪れる。しかしそこでもマスコミ、彼の愛人、彼を追いかけてきたプロデューサーや評論家に出くわし、グイドは追い詰められていく。いつしかグイドは現実を離れ、幻想の世界へと迷い込む。

ミュージカル『NINE』感想

9歳のグイドの目線でみる作品かな

あらすじ見てもよくわからないと思うけれど、舞台みてもよくわからないw

内容は浅いような深いような(見る人によって変わると思う)

梅芸のNINE記事には、演出家の藤田俊太郎さんのコメントで、

「NINE」は映画が撮れなくなったグイドの再生の物語。グイドに寄り添う女性たちが彼を愛することを通して、様々な愛のかたちを描く普遍的な親愛の物語 https://www.umegei.com/nine2020/

と書かれていえるのですが「愛のかたち」というのは男性側からみた視点かなという気がします。

私(女)の目線でみると、大人になっても頭の中の母親に支配され、色々な女性を求めても心の乾きをいやせない男性が、女性を振り回す物語に見えてしまう。

(9歳までのグイドが記憶している)優しい母親像を追い求める姿が光源氏、良妻的なルイザ(咲妃みゆ)は紫の上、奔放で情熱的なカルラ(土井ケイト)は朧月夜の君、グイドがミューズと呼び、彼女自身もグイドに気持ちがあるのにそれを抑えるクラウディア(すみれ)は、藤壺の女御・・・なんて男性のご都合主義に女性が振り回される源氏物語が観劇中ちらっと頭に浮かびあがりました。


ここまでは女性の私からみた感想なのですが、舞台にほぼ出ずっぱりなリトル・グイド(子役)の存在を考えると、現実世界の成人グイド(城田さん)の心の中にいる9歳のグイド視点で描かれているのかなと思えました。

リトル・グイドはこの作品のもう一人の主人公、という気がします。

グイドは9歳の時娼婦サラギーナに会い性に目覚め、そのことでカトリック系の学校から懲罰を受け、愛する母からは叱責と拒絶を受け、大人になって成功した今も彼の傷となっている。

サラギーナとの出会いは、ナイン原作の8 1/2を製作したフェデリコ・フェリーニ監督の実体験にあるようで、性にまつわる怖い体験や愛する母親からの拒絶は、男性にとって(女性にとってもだと思うけれど)、どうしても消せないトラウマに成り得る。

プログラムにリトル・グイド役3名への質問「グイドに掛けたい言葉は?」があったのですが、

「成長するって苦しいことがあるんだね」
「いろいろな気持ちを抱えたまま大人になって苦しかったね」
「完璧な人なんていない。完璧を目指すのが格好いいんだよ」

などと、グイドの苦しみに沿うものでした。舞台をみるとわかりますが、リトル・グイド役の子役さんたち、大人のグイドをよく見ています。

ナインは女性より男性の方が理解できる作品な気がするけれど、幼少期のトラウマを大人になってからも消化できず、幼い頃の自分を抱えたまま生きているグイドの姿は、全ての人にあてはまるのかもしれません。

良かった点

音楽

音楽が恰好よくて好きです。シネマ・イタリアーノ入らないのは残念でしたが、おしゃれな曲が多い上に似通った曲もなく、個人的には耳で楽しめる作品でした。

屋比久知奈さんサラギーナの歌うBe Italian。タンゴのようなリズムとイタリアらしい旋律が、屋比久さんの躍動感のある歌声にのって劇場を圧倒していましたね。素晴らしかったです。

城田優さんグイドの曲は、特にGuido’s Songは音域が広いように思えましたが、なんなく歌いこなされていました。私の記憶以上に低音が良くて、もともと歌上手な方だと思っていますが、さらに歌声が響くようになった気がします。

映像を使った演出

映画監督の作品だからこそできた演出ですが、私たち観客が映画を見ているように錯覚させる映像を使った演出が、おしゃれで作品によく合っていました。

英語と日本語の歌

基本的に日本語ミュージカルは日本語で歌われるのが基本ですが、今回は英語で歌われる曲もいくつかありました。英語の部分は字幕が出るので意味はわかります。

普段は日本語の方が意味がわかりやすくて好きですが、ナインの楽曲、今回のおしゃれな舞台には英語が合うと思いました。

リトル・グイド(熊谷俊輝さん)

先ほども書きましたが、リトル・グイドは出番が多く、大人グイドへ呼びかける姿を思い出してみると、この作品のもう一人の主人公。見せ場は2回くらいあり、私がみた回は熊谷俊輝さんで、、ボーイソプラノの美声が心に響きました。

グイドはイタリア人で、イタリアは歴史的にキリスト教の中でもカトリック教が根付いている国。(劇中にもバチカンの枢機卿との会話が出てくる)

大人グイドがカトリック教からみたら堕落的な生活をしているのに対し、リトル・グイドの美しい声は教会の厳かな祈りのように聞こえ、グイドの相反する内面を表しているようにも感じました。

チケット追加予定はないのだけれど、もう一度みるとしたらリトル・グイドを目が追うと思います。

前田美波里さんのFolies Bergere(フォリー・ベルジェール)

前田美波里さんの役はグイドに製作を促す映画プロデューサー、ラ・フルール。かつてはフォリー・ベルジェールのスターです。

フォリー・ベルジェールはパリのナイトシーンを代表する伝説的なホール。そういえば去年、マネの絵画「フォリー・ベルジェールのバー」が上野の美術館にやってきて見に行きました。

ラ・フルールがスターだった当時の格好で歌うシーンでは、煌びやかなレオタード姿で羽根をしょい、美しい足を惜しげもなく見せる。この華やかなパフォーマンス姿は、今回の公演で一番見ごたえのあるものでした。今、72歳なんですね…お美しい。

ちなみに映画「ナイン」ではジュディ・デンチが演じていた役です。

舞台の美しさxDAZZLE

今回、メインキャストの動きに集中してあまりよく見られなかったのですが、ナイン観劇後に感じた舞台の美しさは、DAZZLEの方々の存在が大きいです。初めて知ったのですが、DAZZLEはストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合させたオリジナルダンスを産み出す、ダンスカンパニー。

ナインでは踊るだけでなく舞台転換なども行っていました。動きが1つ1つ美しくて、内容的にはツッコミどころが多く感じた作品ながら、観劇後心に残る美しさは、DAZZLEのメンバーによるものという気がします。

リトル・グイド同様、チケット追加するなら目で追いたくなる存在でした。

イマイチな点

母親の存在感

イタリア人にとってママの存在は偉大で、9歳のグイドにトラウマを与えたのも母からの叱責。

今の大人グイドを作るきっかけになったと思うので、とても重要な人物と思うのですが、今回の舞台を通してグイドに影響を与え続けるママの存在感がさほどに感じられませんでした。

映画でもママがずっと出てくるわけではないのだけれど、その分ソフィア・ローレンという大女優を起用して、存在感の大きさを補っていたような。

ただ、母役の春野寿美礼さんが悪いわけではないんですよね…

衣装が地味だったのもあるかもしれない。(サラギーナのことで叱責したこともあり禁欲的?な衣装を着ていた)
あと私が2階席に座っていたからかもしれない。

グイドの脳内に聴こえる「ママ」の声を追って、オペラグラスで舞台のあちこち探したのですが、ママを発見できないことが多く、グイドにインパクトを与えた母親という印象が残らなかったです。

ラ・フルールの前田美波里さんのようにママをキラキラさせるのは無理かもしれないけれど、もうちょっとドーンとした登場シーンがあればよかったのにと思いました。

グイドの年齢

城田さんのグイド、心の埋められない何かを求めている感じすごく良くて、歌もよくて、本当に素晴らしかったんです。

でもグイドにしてはフレッシュ過ぎるというか。

チャプリン以来の天才といわれた映画監督で、心に弱さを持っていて、自分で解消できず女性に甘えてきたグイドのイメージは、枯れた色気のあるおじさん。こういう男性いますよね?くたびれた感じなんだけれど、放っておけない色気が漂う人。私は嫌いだけれど・・・

城田さんが悪いのでは決してない、ただ10年~15年後くらいがグイド適齢期な気がしました。


ママにしてもグイドにしてもですが、全体的に、キャストがぴたっと収まっていないような感じがする公演でした。

スパのマドンナも作品進行役というか狂言回しも兼ねていたようですが、うーん…この役は必要なのかwと思えたり。

でもこちらもマドンナ役の原田薫さんが悪いわけではない…

あと細かいことをいえば、ルイザが最後に自分たちの思い出を映画のネタに使われたと、グイドに切れるシーン。

ピクニック用のランチを注文した2人の思い出を映画のネタに使われたことでルイザが怒る。これは日本版だけでなくミュージカル版共通のようですが、映画ではもっとわかりやすくて、ルイザが大切にしていたグイドの言葉を、グイドが他の女優にも同じセリフを伝えているのをみてルイザは怒る。

ミュージカルのランチの話は、プログラムによるとイタリア人にとって食事はとても大切で愛情を推し量るものでもあるから、イタリアものならではの演出らしいですが、これ、日本人にわかるのかな~とも思いました。
自分には、突然ルイザが怒りだしたようにみえてびっくりしました。

ま~あとは、やっぱりシネマイタリアーノがなかったことかなぁ….

ステファニー演じるエリアンナさんのシネマイタリアーノみたかった。


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キャスト
グイド・コンティーニ:城田優
ルイザ:咲妃みゆ
カルラ:土井ケイト
クラウディア:すみれ
サラギーナ:屋比久知奈
ラ・フルール:前田美波里
ステファニー:エリアンナ
母:春野寿美礼
スパのマリア:原田薫
リトル・グイド(トリプルキャスト):大前優樹、熊谷俊輝、福長里恩

DAZZLE (長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、渡邉勇樹、高田秀文、三宅一輝)
彩花まり 遠藤瑠美子 栗山絵美 Sarry 則松亜海 原田真絢 平井琴望 松田未莉亜 大前優樹・熊谷俊輝・福長里恩(トリプルキャスト)

脚本:アーサー・コピット
作詞・作曲:モーリー・イェストン
演出:藤田俊太郎