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劇団四季『ノートルダムの鐘』感想@幸せな結末に思えた観劇回

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』横浜KAAT、今期3度めの観劇をしてきました。

毎回圧倒され観劇するこの作品ですが、この日は終演後しばらく呆然。長いカーテンコールが終わるころ、ようやく意識が戻って来た感じでした。

お芝居がすごかった。

今まで当たり前に見ていたことが、違ってみえたりしました。

座席が下手のはじっこ前方席です。前回は上手のはじっこ前方席だったので、逆の位置でした。

下手側の前方席は過去にあまり座ってこなかったので、ここから見える皆さんの表情が新鮮でした。

目次

感想


冒頭、差し込む光の中に立つ野中フロロー。

威厳に満ちた姿は神々しく絵画のようでした。

一転、弟のジェアンと一緒にいた時の表情は穏やかで、声までもが柔らかく「弟を愛する優しい兄さん」。

しかしジェアンは教えに背き、ジプシー女(フロリカ)と出ていってしまう。そして死の床で渡されたジェアンの子、カジモド。

今期の野中フロローは、以前に比べるとカジモドに厳しいような気がしたのですが、このシーンの野中フロローの表情を見ていると、カジモドはジェアンの犯した罪そのもので、救いをもとめる存在。だから、自分(フロロー)が常に教え導くのだ、と強い決意をしているように思えました。

カジモドに対しては、家族というより「罪」と認識しているように見えて、でも、愛する弟の子でもあるから情もある。そんな風に思えます。

今回、改めて思ったのが、フロローはカジモドが安心して暮らせる場所(大聖堂の鐘突き塔)を与えていたんですよね。

今更なに?って感じですが。。。

カジモドは大聖堂で孤独だったし、外へ出たい気持ちが「Out there(陽ざしの中へ)」となり、観客の私も「外の世界にでたいカジモド/カジモドを守っているけれど、隠してもいるフロロー」という目線でずっと作品をみてきました。

でも、外の世界で自由に生きられるけれど、居場所のないジプシーのエスメラルダやクロパンの存在を思うと、比較できるものではないけれど、あぁ、カジモドの場所をフロローは与えていたんだなと改めて気付かされました。

外で暮らせないカジモドと、外でしか生きられないジプシー。

その対比が強く出ていたのが、物語終盤の「奇跡もとめて」。

佐久間フィーバスが、松山エスメラルダに「僕も君たちについていく」と言ったとき、松山エスメラルダが、唖然としながらも感極まった表情をしていたのが忘れられません。

今まで、エスメラルダは頭がいいから、フィーバスの心根の優しさや誠実さをわかって2人は惹かれあった、と思っていました。でもこの日、松山エスメラルダのこの表情を見て、エスメラルダがフィーバスに心底惹かれたのは、この場面だと思えました。

ジプシーとして生きてきたエスメラルダは、時に人から疎まれ、定住する事ができず、さすらう生活の過酷さをよくわかっている。だから、フィーバスの覚悟が心に響いたんだと思います。もう何回もみているシーンなのに。こんな風に思えたのは初めてです。

たぶん、アニメ版のイメージや、ジプシー=流浪の民で、自由を愛する人たちという先入観が自分にあったんでしょうね。

そして、フィーバスとエスメラルダが惹かれあう姿に打ちのめされる寺元カジモド。

外の世界で生きられないカジモドは、フィーバスのようにエスメラルダに付いていくとは言えないんですよね。

でも・・・

処刑されるエスメラルダを救出し、連れてきたのは、カジモドの大聖堂なんですよね。

「ここは君のうちだよ」という寺元カジモドに、松山エスメラルダの表情は本当に嬉しそうで。

カジモドは外の世界へと「Out There」と願ったけれど、外の世界に出たことでエスメラルダに出会い、エスメラルダがずっと得られなかった「居場所(うち)」を与えてあげた。

で、これは、もともとフロローがカジモドが安心して暮らせる場所を与えていたからなんですよね。

ただ、カジモドがエスメラルダに与えたのは、居場所だけじゃなくて、カジモドそのものがエスメラルダにとって安らぎでもあったことだと思います。

エスメラルダは優しいけれど、ジプシーである自分を周りがどう思っているかわかっているから、警戒心も強いと思う。

でも、カジモドの純粋な心はエスメラルダに警戒心を起こさせず、安心して一緒にいられる存在だったと思う。

松山エスメラルダは、カジモドに対して目線が一緒で、憐れむのではなく、カジモドを理解したい、と思っているように見えました。

エスメラルダが亡くなって、大聖堂にきたフィーバスは肩の怪我から、エスメラルダを連れて行くことはできず、カジモドがずっとエスメラルダを抱き続ける。骨になるまで。

この日は、幸せな結末に思えました。

エスメラルダは安らげる居場所を手にいれ、カジモドは愛するエスメラルダが欲しかったものを与えてあげられたのだから。

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文章に入れられなかったので、寺元カジモドの感想を。

2回目の寺元さん。前回初めて見た時、「Out There」で、外に行きたいけれど外の世界を怖がってもいる姿が印象的でしたが、この日は、外に行きたいんだ!!という気持ちが溢れているようでした。

歌いだし始めの方は、顔がひどく歪んで曲がったまま歌っているのに、明白に言葉がわかり驚きました。母音法のトレーニングをされているからでしょうか。

ジャンプした時の滞空時間が長く、運動能力もすごそう。

ぴょんぴょんと不自由な身体で動き回って、本当にカジモドがいる!!という感じ。

フロロー突き落とし前、背骨をバキバキ折りながら身体をまっすぐにし、その後、身体が痛む(という演技)ようで、よろめきながら動いている演技の細やかさ。

エスメラルダを失った時の、悲しみで覆われた顔を、オペラグラスで見てしまい、こちらの涙が止まらなくなりました。

前回も思ったけれど、本当に寺元さんは東宝から四季に来てくれてよかった。。歌もとても上手。すこーんと綺麗に伸びて、でも本人は綺麗に歌おうとしていないのがいい。。

そして髙橋クロパン。前回みて大好き~!となったクロパンです。

やっぱり華があるなぁ。

舞台で暴れるクロパン、とてもいいです。

阿部クロパンみたいに、一回目と二回めの「パリの朝~」の歌い方が違っていて好き。

 

毎回、すごい物を見せてくれるこの作品だけれど、この日の舞台を一生記憶に留めておきたい。そんな風に思える日でした。

チケットを持っているのはあと1回。どうか無事に観劇できますように。

キャスト:2022年7月15日(昼)公演  KAAT 神奈川芸術劇場〈ホール〉

カジモド 寺元 健一郎
フロロー 野中 万寿夫
エスメラルダ 松山 育恵
フィーバス 佐久間 仁
クロパン 髙橋 基史

【男性アンサンブル】
武藤 洸次
中田 雄太
光山 優哉
長尾 哲平
中橋 耕平
平山 信二
手島 章平
大木 智貴

【女性アンサンブル】
中山 理沙
近藤 きらら
奥平 光紀
平田 曜子

【男性クワイヤ(聖歌隊)】
篠田 裕介
柳 隆幸
佐保 佑弥
澤村 楽人
千葉 晃樹
真田 司
塙 康平
和田 ひでき

【女性クワイヤ(聖歌隊)】
中村 侑佳
葛葉 かな
潮﨑 亜耶
青栁 歌奈
古岡 和香奈
薄井 美伽
織笠 里佳子
吉田 瑛美

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