ミュージカル「ウェイトレス」あらすじと感想@高畑充希/宮野真守/LiLiCo/おばたのお兄さん/渡辺大輔さん出演

日生劇場へミュージカル『ウェイトレス』を観劇してきました。

おけぴとチケットぴあの貸切公演です。

公演開始後から高評価な口コミが多く楽しみにしていましたが期待以上!

ストーリーも面白いしキャストさんたちが最高でした。

中でも、噂に聞いたおばたのお兄さんのオギーが異次元レベル。一幕の終盤にようやく出番だったのに、一幕の笑い全てもっていった気がしますw

ミュージカル「ウェイトレス」あらすじ

東宝「ウェイトレス」より引用

https://www.tohostage.com/waitress/intro.html

アメリカ南部の田舎町。そこにとびきりのパイを出すと評判のレストランがある。ウェイトレスのジェナ(高畑充希)はダメ男の夫・アール(渡辺大輔)の束縛で辛い生活から現実逃避するかのように、自分の頭にひらめくパイを作り続ける。そんなある日、アールの子を妊娠していることに気付く。訪れた産婦人科の若いポマター医師(宮野真守)に、「妊娠は嬉しくないけど産む」と正直に身の上を打ち明ける。

ジェナのウェイトレス仲間も、それぞれ自分のことで悩む日々。ドーン(宮澤エマ)は、オタクの自分を受け入れてくれる男性がこの世にいるのかと恋愛に臆病だが、出会いを求め投稿したプロフィール欄にオギー(おばたのお兄さん)からメッセージが届き困惑する。また、姉御肌のベッキー(Wキャスト:LiLiCo/浦嶋りんこ)は、料理人のカル(勝矢)と毎日のように言い争っている。ベッキーは病気の夫の看病と仕事を両立しているのだった。

ある日、店のオーナーのジョー(佐藤正宏)が、ジェナに「全国パイづくりコンテストに出場し、賞金を稼いだらどうか?」と提案する。その言葉をきっかけに、ジェナは優勝して賞金を獲得できたら、アールと別れようと強く決心する。

診察を受け、身の上話を語るうちに、ポマター医師に惹かれはじめるジェナ。ポマター医師もまた、ジェナへの想いを抑えられず、二人はお互いが既婚者と知りながら、一線を越えてしまうのだった。

そして、ジェナの出産の日は、刻一刻と近づいていく……。

感想(ネタバレあります)

客席へ入ると緞帳がパイの模様になっていて、ステージ両脇には美味しそうなパイがずらっと縦に並んでいます。

ブロードウェイでは実際にパイの香りがしたらしく、感染症のことが無ければ日本も同じだったのかも。

バンドがステージ奥にいて、主人公が勤めるダイナーにバンドがいるようにもみえます。

ポップで可愛いイメージの作品ですが、DV夫に望まない妊娠、ダブル不倫と文字にすれば重たいテーマを扱っています。

しかし登場人物の内面の葛藤をコミカルにテンポよく描いているので、終始笑える舞台でした。

 

パイ作りが得意な主人公ジェナは、暴力夫のアールとの生活に希望を見いだせない。夫への愛情は全くなくなっているのに妊娠してしまう。

一見、夫の存在がジェナに不幸や葛藤をもたらしているように見えます。

しかし本当は、妊娠したとまどいと怖れが問題になっている、と思う。

ミュージカル化の原作になった映画「ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた」は、監督でドーン役でも出演した故エイドリアン・シェリーが、子供を身ごもった時に書いた作品です。

子供を持つことで自分の人生がどうなるかわからない怖さがあるのに、妊娠の怖れを語ることはタブーだった…そのタブーとされている怖れをテーマにした映画を作りたかったとのこと。

確かに妊娠したら「おめでとう!」「いつ生まれるの?」「楽しみだね」と祝福されるのが一般的。でも、

自分に子供を育てられるのか?
今までの生活がガラリとかわってしまう..
夫は頼りになるのか?

と、結婚相手がモラハラでなくても、不安がつきない女性も多いはず。

しかし、心の中で思っていても「赤ちゃん妊娠して嬉しいと思えない」と、口に出して言うの、なかなか勇気がいる。

これから生まれてくる赤ちゃんに対しても、申し訳なく感じるだろうし。

 

ジェナは、不安があるからといって子供をおろすほどの理由もなく、友達にあんな亭主とは別れなよ、と言われながらも現状を変える気はなく日々不安と折り合いながら生きています。

はたからみたら十分不幸だとしても、生活の変化を求めて行動することはそう簡単ではない。

当人にとっては現状の不幸は認識できても、何か行動を起こしてガラリと生活が変わる方が、その先が想像できなくて怖い。

人間なんてそんなもんだと思う。

同時期公演中のプロムのアリッサを思い出しました。レズビアンとカミングアウトできない現状の苦しさと、カミングアウトしたら保守的なPTA会長の母親がどう反応するのか・・・カミングアウトした先に訪れるであろう親子関係の変化に悩んでいたように。

この人生を抜け出したい、でも抜け出せないジェナを演じている高畑充希さん。

ジェナは等身大で現代的な女性だから「演じる」のは難しそうだけど、強くもなく弱くもない女性を演じ切り素敵なジェナでした。

歌声に透明感があり時にパワフル。二幕の「She used be mine」は魂の叫びのように聞こえ泣けました。

高畑充希さんとの掛け合いが楽しかったのが、ポマター医師の宮野真守さん。

2人のテンポ感、長年の漫才コンビみたいです。

ジェナもポマターもシングルキャストだけど、この2役は人が変わると作品の印象が全く変わりそうです。

ミュージカル「ウェイトレス」はかなり大人向けな作品で下ネ〇も多いです。W不倫するこの2人はきわどいシーンもあるのですが、全く下品にならないのは、作品や演出の力もあるだろうけど、この2人の空気感もある気がする。

妊娠を喜べないジェナに対し、はたからみれば恵まれているであろうポマター医師も、幸せとは言い切れない気持ちを抱えている。

恐らくポマター医師は、自分を抑え込み、気持ちに蓋をして人生を歩んでいたけれど、ジェナに出会ったことでストッパーが外れる。

「何か足りないものを抱えている2人がこの瞬間カチっとはまっちゃった」

と実にあやふやな理由で始まる2人の関係に対し、「そういうこともあるよね」と高畑充希さん宮野真守さんコンビは妙な納得感がありました。

宮野真守さんの顔芸?面白顔満載のステージに笑い、コミカルさが多い分、寂し気な表情をみせるシーンは強く記憶に残ります。

ジェナはポマター医師と不倫関係に陥るけど、彼と永遠に関係を続けたいわけじゃない。そしてポマター医師に背中を押されて行動するわけではない。

それでも現状を変えられなかったジェナに、考えるきっかけを与える人物ではあったと思う。

このちょっとあやふやな感じが非常にリアルに感じます。

 

ジェナの友人のドーン。演じているのは宮澤エマさん。

パンフレットによるとピピン出演した時、ウェイトレスのブロードウェイ演出のダイアン・パウルスからドーン役のオファーを受けたのだとか。

オタク気質なキャラクターと、可愛い表情、そして綺麗な歌声でエマさんのドーン大好き。

映画でドーンを演じたエイドリアン・シェリーに雰囲気が似ています。

エマさんドーンに惚れてストーカーになるのが、おばたのお兄さん演じるオギー。

この作品の秘密兵器といって良い存在なのでは笑

開幕直後から評判よくて楽しみにしていましたが、お笑い芸人の方なので、何かしらアドリブで笑わせるのかな?と思いきや、お芝居をきっちりした上でのお笑いです。

出番は多くなく、一幕も最後の方にようやく登場するのだけど、一幕の笑い全てもっていってしまい、普通に舞台からはける際に拍手が沸くほどでした。

演技も良いし、歌もすごく上手です。何よりおばたのお兄さんの運動神経の良さが、オギーをめちゃくちゃ面白くみせていると思う。

wiki情報ですが、日本体育大学体育学部卒業で、アスリート芸人でもあり、ダンサーとしての活躍もしているそう。

おばたのお兄さんオギー登場シーンはどれも見所だらけですが、個人的には縦にジャンプしながら足をぐねぐね交差する姿が頭から離れませんw

この作品の登場人物は、みんなそれぞれ迷いを抱えながらいきているけど、オギーだけは迷いがなく、ドーンにも一直線なのがみていて爽快でした。
 

ジェナのもう1人の友人ベッキー。姉御肌で、病気の夫と暮らしている女性。

ベッキーはLiLiCoさん、浦嶋りんこさんのWキャストで、私が観たのはLiLiCoさんでした。

ミュージカル初出演というので、正直身構えていたのですが、すごーくすごーく良かった!

映画コメンテーターのイメージが強かったのですが、歌手でもあり、映画出演もされているんですね。パワフルな歌が素敵だったし、演技も上手。

ベッキーは道徳的に正しくないことでも「人生ってそんなもんよ」と人に説得できる姉御肌な雰囲気が必要なので、LiLiCoさんのイメージにも本当にぴったりです。

LiLiCoさんやおばたのお兄さんのおかげで、ミュージカルの経験なくてもポテンシャルの高い人はいる!!と分かった事が大きいです。(おばたのお兄さんは正式にはミュージカルは2回めらしい)

ミュージカル未経験でもちゃんと出来る人を選べば、何の問題もないのよ!!

その人の得意なものとマッチする役を選べば良いのよ!!

と、つくづく思いましたw

 

ベッキーのお相手となるのが、ダイナーのシェフ、カル。

がさつで怒鳴ってばかりだけど、悪い人間じゃなくて、ちゃんと人間味を見せるところではみせる。

カルを演じる勝矢さん、キンキーブーツのドンを思い出します。

ベッキーとカルのカップルもW不倫。ベッキーの旦那さんは寝たきりで、カルの奥さんは恐らく同性愛者で、じゃあ旦那さんや奥さんと別れれば?とジェナが問えば、それはない、だって相手を愛しているからと。

ウェイトレスは色々な愛の形を描いている作品だと思う。

それでいながら、恋愛至上主義ではなく、今日一日を幸せに生きていくためのスパイスのような存在でもあったり。

3つのカップルが登場し、それぞれ似た者同士がくっついているなとも思う。ここら辺もリアルな描き方をしている気がする。

 

戸籍上は夫婦だけど、カップル枠に入らないのがジェナのモラハラ夫アール。

アール以外の登場人物は、弱さがあっても愛すべき部分があるけど、アールだけはそれがない。

アール演じる渡辺大輔さん、役を引き受けるの躊躇しなかったのだろうかw

見事なクズっぷりで(褒めている)、パンフレットにブロードウェイ公演ではアールが登場するとブーイングが起きると書かれていました。

アールも恐らく過去を紐解いていくと可哀想な子供時代とかありそうだけど、そこは見せず、一貫してモラハラ野郎です。ジェナに捨てられるかもと怯えて泣きつく姿はちょっと可哀想だったけど、これも多分モラハラの常套手段。

ジェナ出産のシーンでもクズっぷり発揮していたおかげで、ラストはせいせいしました。

そして、ジェナにパイづくりコンテストへの出場を提案するダイナーのオーナー、ジョー。演じるのは佐藤正宏さん。(村井國夫さんが予定でしたが、降板しました)

口は悪くてちょっと面倒臭い人だけど、ジェナを見守る温かさにほろりときます。カントリー調の年寄りに聞きなさい、の曲がとても良いです。

思い返してみても素敵な舞台で、再演あるとしたらまた同じキャストさんで観たいな。

まあまあの幸せであれば良い、と思っていたジェナが、子供(ルル)が生まれたら、いっぱいの幸せを見つけよう(幸せなことをしようだったかな?)と、前向きな気持ちにかわったのが観ていて最高に嬉しくなりました。そこそこの幸せじゃなくていっぱい幸せになりたいよね。

キャスト

ジェナ:高畑充希
ポマター医師:宮野真守
ドーン:宮澤エマ
ベッキー:LiLiCo
アール :渡辺大輔
オギー:おばたのお兄さん
カル:勝矢
ジョー:佐藤正宏
ルル:望月彩生


Waitress (Original Broadway Cast Recording)


ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた (吹替版)