「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳」感想とあらすじ(三浦春馬/生田絵梨花)

2020年春、日生劇場へ「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~」を観に行きました。

日本初演なんですね。

とても好きな作品でした。

キリスト教の話が随所にちりばめられ、自分的には「信じ切る心は、人を救う」という作品。

レミゼで、盗みを働いたジャン・バルジャンが司教様に出会い、改心するシーンを思い出しました。

 
楽しみにしていたアンドリュー・ロイド・ウェバーの音楽の美しさは期待以上。

バラード、ロック、讃美歌、ポップ、カントリーウェスタンと、登場人物によって音楽が代わり、今でも音楽を聴くとその情景がすっと頭に浮かぶほど印象的でした。

特に感動したのが讃美歌を歌う子供たちです。

普段観ている舞台よりも子供が多く出てきました。

子供たちの讃美歌の透き通った声が、無垢な心を連想させてタイトルにある「汚れなき瞳」の表現が、しっくりきました。

 

現在、世界中で爆発的に感染者が増えている中、日本も2月末から公演中止、再開、再び中止と、演劇業界もとても大変な状況です。

私も、3月はアナスタシア、サンセット大通り、リトル・ショップ・オブ・ホラーズと手持ちチケットの公演中止が決まり、ホイッスルも、1度目が中止。今回2回目のチケットでようやく観れました。

しかし都知事の会見後は再び各公演中止。ホイッスルも千秋楽待たず 公演が終わってしまいました。

劇場では熱を感知するサーモグラフィーを用意し、入場と伴に一人一人の手に消毒スプレーをかけてくれ、今回、役者さんも興行側も収入的にも精神的にもたいへんな中、どれほどの覚悟で開演し、また公演の中止の決定をされたのか、考えると胸が痛くなります。

ただ私は、マスクでおとなしく観劇しているお客さんの感染よりも、舞台で歌い、しゃべり続ける俳優さんたちの健康の方が気になってしまいました。

「舞台に上がらないと収入にならない」

この事実を知っているから、舞台ファンは幕を開いてくれた事に感謝しそれが続くことを願っていましたが、歌うことで収入を得ているミュージカル俳優さんが肺炎にかかってしまうと、それこそお金で済まない話になってしまう。

事態もどんどん悪化してきて、今では自分も感染している前提で行動しないといけない段階になってきている。

だから俳優さんも興行側も安心して公演ストップできるよう、これを機に俳優さんがもっと補償され、舞台もこういった緊急時に国から保護されるようになれば良いと思います。

アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国がいち早く演劇業界への援助や心強いメッセージを伝えたことを考えると、日本は遅れすぎている!

「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳」感想とあらすじ

前置きが長くなりましたが、日本初公演 「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~」の感想をあらすじと伴に。

完全なネタバレにならないように気を付けます
 

舞台は1959年のアメリカ・ルイジアナ。

住民同士、全員知り合いのような小さな町。

よく言えばアットホーム的。悪くいえば、よそ者や新しい価値観が受け入れられにくい町。

ここに住んでいるのが、スワロー(生田絵梨花)たちの一家です。

スワローは、父のブーン(福井晶一)、妹のブラッド(高原碧那)、弟のプアベイビー(井伊 巧)と伴に、母を亡くし、トレーラーハウスで寂しく暮らしていました。

妻を亡くしたブーンはふさぎ込み、子供たちとはぎくしゃくした空気が流れていました。

 

 
観ていて、家族の微妙な空気感がよく出ていると感じました。

父のブーンは、何か事情があるようなのに、まだ子供だと思い3人に全てを説明しない。

お母さんを亡くし寂しいのに、お母さん代わりにしっかりしなきゃと思う長女スワロー。

空気を読み気をまわす次女のブラット。

ブラット役の高原碧那ちゃん。姉に気を使い笑顔をとりつくろったり、目をふせたりと、次女の気持ちが痛いほど伝わってきました。

 

スワロー、ブラット、プアベイビーの3人はある日、納屋に一人の男(三浦春馬)が横たわっているのを見つけます。

男は殺人の罪を犯し(たと思われる)逃亡中の身。スワローたちの家の納屋に逃げ込んだのでした。

 

子供たちに見つかってしまった男は、思わず「ジーザス!(くそっ)」と口にします。

しかしその言葉を聞いたスワローたちは、男がイエス・キリストの生まれ変わりだと信じてしまう。

なぜならボロボロの姿、手のひらと足の甲の傷が、イエス・キリストが磔刑された時の姿とあまりに似ているから。

そして子供たちが、「こんなに悪いこと続きなら、つぎは良いことがあるはず」と、希望を抱きたいと思っていたから。

イエス・キリストの生まれ変わりと信じた子供たちは、男を匿い大人には秘密にして、男のケガを治そうとします。(大人に知られると、キリスト同様無実の罪をきせられてまた殺されるから)

男を気にかけ熱心に世話する長女スワロー。

男を信じ、「死んだ母を生き返らせてほしい」と男にお願いします。

「あなたが私を愛してくださっているのを知っています。私もあなたを愛しています。」

男をキリストと信じるスワローの口から出てくる愛(敬愛?というのがふさわしいかも)の言葉。

男の足を洗い(=最後の晩餐で、イエスが弟子の足を洗う洗足シーンにちなんでいるらしい)、男に心をこめて尽くす。

生田絵梨花さん演じるスワローは、男をイエス・キリストと信じているピュアさに加え、「信じたい」と強い願いがあるように感じました。

心のよりどころがなかった少女に、突然、夢をかなえてくれるかもしれない存在があらわれた。

信じ切れば、母に会えるという願いが叶うのではないか?と。

 

この作品には多くの子供が登場し、無邪気に男をイエス・キリストの生まれ変わりと信じています。(弟のプアベイビーは偽物だ~なんて言っていますが)

それに対しスワローは心底信じるというよりも、信じたい気持ちも強い、子供と大人の間の存在のように感じました。

このピュアさと子供になり切れない部分の雰囲気が、生田絵梨花さんにとても良く似合っていて、生田さんのスワローとても好きでした。

この作品は、子供と大人の対比がはっきりしていて、それが曲でも表現されています。

・男をキリストの生まれ変わりと無邪気に信じる子供には讃美歌を
・逃亡犯を追い詰める大人たちには不協和音のメロディーを

子供と大人の相反する旋律を同じ曲に使い、交互に繰り返すシーンは大迫力でした。

 

大人と子供の中間の存在に、スワローの幼なじみエイモス(平間壮一)、そしてエイモスのガールフレンドのキャンディー(MARIA-E マリアイー)がいます。

2人に与えられるのはロック調のナンバー。

大人に反抗する存在としてロックを歌うのでしょうか。

私が観劇した日のキャンディーは、WキャストのMARIA-Eさんだったのですが、心地の良いパワフルな歌声に圧倒されました。

すごく上手です。調べたらミュージカル作品は今まで、ビューティフル、キューティーブロンドに出演歴があるそうですが、これから他の作品でも観ていきたい方です。

 

若者代表のエイモスとキャンディーは恐らく、町の閉鎖感を伝えるのに重要な存在です。

キャンディーは黒人の女の子。

1950年代のアメリカの田舎にいたら、周りとなじめず疎外感があっただろうと想像できる人物です。

そんな時代にキャンディーと仲良くしていたのがエイモス。バイクをのり、周囲の大人からみたら浮ついた少年といったところですが、心が広く偏見がない事がわかります。

だからキャンディーにとって、エイモスはとても大切。でもエイモスはスワローも気になる。

エイモスとキャンディーは、一緒にこんな町出ていこうと約束しますが、スワローに頼まれたエイモスは、「男」が隠していたあるものを取りにつきあってしまいます。

この事でキャンディーは嫉妬し(当然ですね)、めぐりめぐって、街の人は逃亡犯がスワロー宅の納屋に隠れているらしいことをつきとめます。

男を守ろうとする子供たちと、
子供や街を守るため男を追い詰める大人たち。

作品は双方の正義を問うものではないけれど、ただ言えることは、自分という存在をスワローや子供たちに認め信じてもらった「男」は、かつてないほどの許しと愛を受けたのではないかということ。

多くを語る作品ではなく、結末含めて観客の想像にゆだねる部分が多かったのですが、私は最後に美しい愛と祈りを感じました。

キリスト教のシンボル的なものが多く表現され、誘惑を意味する蛇使いやキリスト教から派生した新興宗教の伝道集会なども登場しました。

記憶力が悪いので一度だけの観劇だと忘れる事が多いのですが、「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~」は、曲をきくと脳内に三浦春馬さんが、生田絵梨花さんが。。。と出てきて男やスワローとして生きてくれるのでずっと余韻を楽しめています。

帰宅してからは、曲を聞きまくっていました。


Whistle Down The Wind (1998 Original London Cast)

CAST
男(ザ・マン)/三浦春馬
スワロー/生田絵梨花
エイモス/平間壮一、東 啓介(Wキャスト)
キャンディ/鈴木瑛美子、MARIA-E(Wキャスト)
ブーン/福井晶一

矢田悠祐、藤田 玲、安崎 求

ブラット/高原碧那、谷岡杏春(Wキャスト)
プアベイビー/井伊 巧、岡本拓真(Wキャスト)

上野聖太、岡田 誠、加藤潤一、郷本直也、長谷川 開、松村曜生、柏木奈緒美、多岐川装子、ダンドイ舞莉花、永石千尋、三木麻衣子、吉田華奈

笠井真雄、佐藤誠悟、谷口寛介、羽賀凪冴、植松太一、佐田 照、河内奏人、工藤陽介、福井美幸、山本花帆、奈緒美クレール、モーガン ミディー、種村梨白花、成石亜里紗、日髙麻鈴、宍野凜々子
 

STAFF
脚本・作曲・オーケストレーション アンドリュー・ロイド=ウェバー
作詞 ジム・スタインマン
脚本 パトリシア・ノップ、ゲイル・エドワーズ
オーケストレーション デヴィッド・カレン
演出 白井 晃
翻訳 浦辺千鶴
訳詞 小林 香
音楽監督 前嶋康明
振付 原田 薫
美術 松井るみ
照明 高見和義
音響 佐藤日出夫
衣裳 安野ともこ
ヘアメイク 川端富生
歌唱指導 安崎 求
演出助手 豊田めぐみ
舞台監督 北條 孝
宣伝 る・ひまわり
アシスタントプロデューサー 清水光砂 関 詩織
プロデューサー 小嶋麻倫子小見太佳子
宣伝美術 永瀬祐一
宣伝写真 西村 淳
宣伝ヘアメイク 勇見勝彦(THYMON Inc.)
衣裳協力 AROMATIQUE C A S U C A、DAVIDS CLOTHING、日本芸能美術株式会社、suzuki takayuki、BEADY、クエルポ