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ミュージカル「笑う男」2022年再演感想

帝劇へ再演「笑う男」を観劇してきました。

初演は日生劇場で再演の今回は帝国劇場。今回は、帝劇の盆やセリをふんだんに使ってゴージャス。いかにもグランドミュージカル!といった楽しさがありました。

再演で初参加組のWデア(真彩希帆さん、熊谷彩春さん)、ジョシアナ公爵(大塚千弘さん)、デヴィット(吉野圭吾さん)が期待以上によかったです。

そして初演よりもお話しがわかりやすくなっていてました。ラストが初演時は救いようのない終わり方に思えたのですが、大幅な変更がないのにも関わらず、今回はこれが自然な結末と思えました。

MEMO

観劇日

2/12 ソワレ(デア:真彩希帆、リトルグウィンプレン:ポピエル マレック健太朗)
2/15 マチネ(デア:熊谷彩春、リトルグウィンプレン:土屋飛鳥)

目次

再演感想(ネタバレあり)

「笑う男」のあらすじは初演時の感想記事をみてください。
(こちらもネタバレ含みます。)

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・ラストが初演よりも納得がいった

初演で初めて観劇した日に衝撃を受けた、デアを抱いたグウィンプレンの入水シーン。初演時は、グウィンプレンとデアの美しさが、1%の貴族たちが納めるこの世界には相応しくないゆえの結末だと思いました。そして原作者のヴィクトル・ユーゴー自身が、「この世界は変わらない」とあきらめをもって描いたのだと。

この時の感想は今も変わらないのですが、前回と大きく違うのが、初演は救われない結末でただ悲しいだけだったのが、今回は悲しさだけで終わらない点です。

・笑顔を交わすウルシュスとグウィンプレン

初演は、ラストでウルシュスとグウィンプレンの2人は笑顔を交わしていなかったような気がします。(見逃していただけ?)泣き崩れるウルシュスの姿が心に強く残りました。

でも今回は、ウルシュスがグウィンプレンを笑顔で見送る。死を選ぶグウィンプレンを理解して受けいれているんですよね。

この作品の登場人物は、貧民にしても貴族にしても報われていない人ばかりで、貴族に逆らえない貧民はもちろん、自分の意志で結婚相手を選べないジョシアナ公爵も、非嫡出子ゆえにグウィンプレンを傷つけたデヴィット・ディリー・ムーア卿も幸せとはいえない存在です。

でも最も理不尽な目にあっているのは、貴族の慰みものになるため口を引き裂かれたグウィンプレン。そんな彼が自分の出自を知り世界をかえるため貴族の世界へ飛び込むけど、自分の考えを嘲笑されて終わってしまう。

貴族の世界を知る前のグウィンプレンは、道化の自分をよくわかっていながらも、理想の世界を描く力を持っていました。でも貴族社会を経験したことでそんな事は不可能と知る。ラスト近くの「笑う男」ナンバーでは、この世界への怒りと絶望を狂気さ交えて歌い、以前のグウィンプレンではなくなったのだと思えました。

自分の居場所であるウルシュス一座に戻って来たグウィンプレンが、そこでデアを失い、再び貴族のために道化として生きられるのか?というと無理でしょう。

そして、ウルシュス。

ウルシュスはグウィンプレンを「笑う男」、自分を「泣かない男」と言っていますが、「現実を受け入れる男」でもあります。

理不尽なこの世界を不思議なくらい受け入れている。

ウルシュスとグウィンプレンのやり取りは、現実を嫌というほど知り息子を諭す父親と、現実に立ち向かおうとする息子の構図がモーツァルト!のレオポルトとヴォルフガングのようでもありました。でもレオポルトなら、ヴォルフガングが理不尽に逮捕されたり命を奪われそうになったら、大司教様に這いつくばっても許しを請いそうな気がします。しかしウルシュスは違う。

別にウルシュスが冷たいのではなく、むしろ何の関係もなかった2人の子供(それも1人は口を裂かれ、1人は赤ん坊)を育てるくらい愛情深い人間です。

でも、グウィンプレンが秘密警察のワペンテイクに捕らえられた時、ウルシュスは全く歯向かわない。

最初は不思議でならなかったのですが、ウルシュスがこの世界をただ受け入れてしまっていると考えると、不自然ではないんですよね。

ファンタジー色強めのこの作品で、グウィンプレンとデアは世俗的な汚さとはかけ離れた存在だけど、ウルシュスが人間的に描かれていることを考えると、貧しさや病で理不尽に子供を奪われる当時の親たちの姿が反映されているのかなと思えました。

そもそも、ウルシュスがグウィンプレンとデアと共に生きてこられたのも、幼いグウィンプレンに「生き抜くならその裂かれた顔を使え」と、現実を受け入れた言葉あってのもの。

だからウルシュスは、道化としてこの世界では生きていけないグウィンプレンを受け入れた。

受け入れたから最後は息子の意志を尊重して笑顔で送ったんだと思います。

その後、自分は哀しみを抱えながら生きていくことを覚悟して。

書きながら、十分悲しい話だよな...と今思っているのですが、ウルシュスとグウィンプレンが笑顔を交わせたことが、前回よりも救いがあるように思えます。

あ、でもウルシュスにとっての例外はデアかな。デアにだけは、現実の怖れや哀しみを味合わせたくないと思っている。現実の汚い世界とは無縁でいて欲しい大切な宝。

現実を受け入れる男が、「デアがいなくなったらどうしよう」と途方にくれ、その現実だけからは逃げたい。

そのデアの命がなくなった事も、グウィンプレンの考えを受け入れた理由の一つかも。

ウルシュスってヴィクトル・ユーゴー自身の考えが投影されたキャラクターなのかな。

キャスト感想

グウィンプレン:浦井健治(うらい けんじ)

初演よりもさらにパワーアップ!特に圧巻だったのがラストの「笑う男」でした。このナンバーに行きつくまでは、グウィンプレンのデアへの優しい思い、醜い自分へのあきらめ、屈託のない青年らしさ、ジョシアナへのとまどいなど様々な感情を持ちながらも内面のピュアさを失わずにいたのが、「笑う男」ですさまじい狂気と絶望を見せ、ナンバーの「笑う」とは真逆の「怒り」が強く伝わってきました。

舞台をみるたびに思いますが、本当に素晴らしい俳優さんですよね。アーサー王も楽しみです。

デア :真彩希帆(まあや きほ)

デアのお二人は贅沢キャストで観劇するのを楽しみにしていました。お初の真彩さんは、目の見えないデアの視線の動かし方や表情が素晴らしかったです。美しい歌声に、ふっと消えてしまいそうな儚さがあります。

デア :熊谷彩春(くまがい いろは)

愛らしい天使のようなデア。透明感があって可愛らしい声が印象的。真彩さんデアが儚い星の光だとしたら、熊谷さんデアは煌めく星の光かな。

真彩希帆さん、熊谷彩春さん2人ともデアにはもったいない??ほど良くて、このお二人ならデアのソロが欲しかったー!

ジョシアナ公爵:大塚千弘(おおつか ちひろ)

難しい役に難曲揃いのジョシアナ。さすがのちーちゃんでした。色気たっぷり、エゴと執念丸出しだけど、真実に気付く鋭さがある。ウルシュス一座を初めて訪れた時、グウィンプレンから「僕たちはあなたたちの為に演じる。そしてあなたたちはすぐに忘れる...」と、真実を告げられ思わず反応できない、といった表情がとても良かったです。初演時はジョシアナ公爵の歌が多すぎじゃないか?と思ったのですが、今回は曲数は(たぶん)変わっていないのにバランスよく感じられました。

デヴィット・ディリー・ムーア卿:吉野圭吾(よしの けいご)

初演の自分の感想記事を読み返したら、この枠は吉野圭吾さんっぽいって書いていました(笑)こういう怪しげでいかがわしい欲にまみれた役がお似合いですw(褒めている)

圭吾さんって、演じると圭吾さんなんだけど、何でも同じに見えるのではなくて、圭吾さん要素が入ることで魅力が増すんですよね~。再演でなんだかんだと気の毒に思えたのが、圭吾さんのデヴィットで、結局「貴族社会」そのものに踊らされている人物に見えました。石川禅さん演じるフェドロによって、危うく地位を失いかけるんですよね。三白眼で歌う「幸せになる権利」がめちゃくちゃ良かった。

健ちゃんグウィンプレンとの剣を使ったシーンは2人とも迫力があって凄かったです。観劇2回目は私の目の前に男の人が座って、舞台中央が見えなくなり、バトルシーンを堪能できなかったのが残念(1階S席)

フェドロ:石川 禅(いしかわ ぜん)

初演時は、フェドロの存在意味がわからず、禅さんなのになんで歌わないのー?と思っていました。でも再演は、貴族を憎むフェドロの企みによって、グウィンプレン、ジョシアナ、デヴィットの運命を大きく変えようとするのがわかりました。再演の方が初演よりも冷徹な感じで、これもバランスよく感じました。まぁ、でも出来ればせめて一曲欲しいです。

ウルシュス:山口祐一郎(やまぐち ゆういちろう)

初演の時は気付かなかったのだけど、ウルシュス一座へようこそ、というシーンはTdVで自分の城に訪れた教授とアルフレートを出迎えるクロロックのシーンに音楽も雰囲気も似ている気がしましたw 今回、TdVメンバー多いですよね。

山口さんウルシュスは、口は悪いけど愛情深くてあたたかくて、このウルシュスに育てられたからひどい目にあっても心根はいじけていない真っ直ぐな浦井グウィンプレンが育ったと思えます。強い親子の絆感じさせる2人でした。

全キャスト
グウィンプレン:浦井健治
デア:真彩希帆/熊谷彩春
ジョシアナ公爵:大塚千弘
デヴィット・ディリー・ムーア卿:吉野圭吾
フェドロ:石川 禅
ウルシュス:山口祐一郎
港 幸樹、上野哲也、宇月 颯、清水彩花、内田智子、小原和彦、仙名立宗、棚橋麗音、早川一矢、福永悠二、森山大輔、横沢健司、池谷祐子、石田佳名子、島田 彩、富田亜希、松浪ゆの、美麗、吉田萌美

スタッフ
脚本:ロバート・ヨハンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
歌詞:ジャック・マーフィー
編曲・オーケストレーション:ジェイソン・ハウランド
翻訳・訳詞・演出:上田一豪
音楽スーパーヴァイザー・指揮:塩田明弘
音楽監督:小澤時史
歌唱指導:山口正義/堂ノ脇恭子
振付:新海絵理子/スズキ拓朗
美術:石原 敬
照明:笠原俊幸
音響:山本浩一
映像:奥 秀太郎
衣裳:前田文子
ヘアメイク:岡田智江(スタジオAD)
アクション:渥美 博
舞台監督:廣田 進
演出助手:森田香菜子
指揮:田尻真高
オーケストラ:東宝ミュージック/ダット・ミュージック
稽古ピアノ:國井雅美/中條純子/中野裕子
アシスタント・プロデューサー:清水光砂
アソシエイト・プロデューサー:塚田淳一
プロデューサー:服部優希/馬場千晃
宣伝美術:植田麗子/大江早季 (TOHOマーケティング)
宣伝写真:森﨑恵美子
製作:東宝

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